2016 Fiscal Year Annual Research Report
クォータ制に対する社会的コンセンサスの形成過程の解明:フランス女性誌を題材として
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15J02745
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 彩佳 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | パリテ / 積極的差別是正措置 / クオータ制 / 政治参画とジェンダー / アファーマティブアクション / ポジティブアクション / フランス / 女性運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ研究成果の発表 ①論文「フランスのパリテ法をめぐる『性差』の解釈――普遍/差異のジレンマを超える『あいまいな本質主義』の可能性」を『ソシオロジ』に発表した。パリテ法制定およびそのための憲法改正の前後の時期に一般紙誌・女性誌・フェミニスト誌の3種類のメディアで展開されたパリテ法をめぐる論争を比較分析した。女性誌では既存の普遍(男女の類似性を尊重しパリテ法を否定)/差異(男女の性差を尊重しパリテ法を肯定)の二分法を超える可能性を秘めた議論があったことを「あいまいな本質主義」という概念とともに提示した。 ②論文「フランスの非営利市民団体(アソシアシオン)によるパリテ実践活動の現状 : 現地聞き取り調査を中心に」を『年報人間科学』に発表した。パリテ促進のためのアソシアシオンは日本のパリテ研究でも着目されていたが、その実情を詳細に伝える研究は少なかった。2016年3月の現地調査の結果をもとに、パリテ促進アソシアシオンのうち国レベルの活動団体Elles aussiとアルザス地方でローカルに活動する団体Femmes d’Alsaceの活動や特徴を考察した。 Ⅱパリテ実践運動の担い手像を解明するための現地調査の計画、実行 ①パリテ実践アソシアシオンに関する先行研究を整理し、それらがパリ在住の女性を中心としていること、1990年代の運動参加者に焦点を当てたものが多いことの2点の課題を明らかにした。②地方部のパリテ実践活動の考察を目的に2017年3月に現地調査を実施した。Femmes d'Alsaceで活動する女性に運動参加のきっかけやモチベーションについてアンケートと聞き取り調査を行い12人から回答を得た。さらにElles aussiの地方支部で活動する女性に対しても同様の調査を依頼し、3人から回答を得た。③女性の立場に関する運動に参加する女性について研究する研究者と交流し、研究発展の示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ⅰ研究成果の発表 2016年以降進めてきたこれまでの研究の成果を2本の査読付き論文としてまとめ、発表することができた。 Ⅱパリテ実践運動の担い手像を解明するための現地調査の計画、実行 本研究の中心であり、実績報告者の博士論文の中心ともなる、パリテ実践運動の担い手像の解明のための聞き取り調査に成功し、研究を大きく進展させることができた。具体的には、昨年度の調査で構築した人脈およびラポールを活かした本年度の調査では、パリテ推進運動への参加のきっかけや、「自分自身をフェミニストと思うかどうか」など、調査対象者の運動経験を問う密なインタビューおよびアンケート調査の実施に成功し、現在までに14人の女性からの回答を得ることができた。加えて、現地調査終了後もeメールや電話を介して調査対象者と密接に交流を行えており、追加調査も可能である。 さらに2017年3月の現地調査期間中には、女性の立場(les cause des femmes)に関する運動に従事する女性について研究する研究者たちとの交流の機会を得て、パリテ実践活動に留まらず女性の立場に関する様々な運動研究が現在フランスでどのように進展しているのかについて情報を収集し、今後の研究発展のための示唆を得ることができた。現地調査終了後もこうした研究者とは密接に交流を行っており、フランスの最新の研究状況について意見交換を行える環境を維持できている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ研究成果の発表 2017年3月に実施した現地調査で得た成果については、まず2017年5月に実施される関西社会学会で「フランスにおける男女同数(パリテ)議会を推進する市民活動の担い手──フェミニストを自称しない女性たちの語りに着目して」として口頭発表したうえで、学会報告で他の研究者から得た知見を反映させながら論文としてまとめる予定である。 Ⅱパリテ実践運動の担い手像を解明するための現地調査の計画、実行 調査対象者のFemmes d’AlsaceおよびElles aussiのメンバーとの交流と聞き取り調査を続ける。特にElles aussiで活動するメンバーについては、現在3名から協力を得ることに成功しているが、来年度の現地調査によって、調査協力者をさらに増やす予定である。 さらに今後は、パリテ実践アソシアシオンに参加する調査対象者の女性たちの多くが選挙への立候補の経験を有することにも着目し、彼女たちが立候補するうえで直面した困難や立候補のモチベーションとなった経験などについての聞き取り調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)