2015 Fiscal Year Annual Research Report
イネの養分利用効率向上のための根圏構造とその関連遺伝子の同定
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15J02762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 諭志 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 根系形質 / 低窒素耐性 / ゲノム育種 / ファインマッピング / ハイスループットフェノタイピング |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる根系構造と環境適応性の大きく異なるOryza rufipogonとCuringa、またそのCSSLsを用いて水耕栽培での種子根長のアンモニア応答に関する形質を評価した。特異なアンモニア応答を持つCSSLsを戻し交配し、その後自家受精をさせた系統の表現型・遺伝子型を評価した。表現型試験にはメッシュフロート法で濃度の異なるアンモニア水耕液を用いて、種子根長を評価した。表現型のデータを用いて遺伝子領域をさらに絞り込むために SNPsマーカーをデザインし、ファインマッピングを行った。しかしながら、最新のSNPsマーカーを用いたファインマッピングではゲノム全域におよぶ広範囲でノイズ領域が検出され、作成したBC4F5世代では十分なファインマッピングができないことが判明した。現在、共同研究先が作成しているノイズの少ない戻し交配体を再輸入し、ファインマッピングを行う方法と他共同研究機関から既に輸入している目的QTLs領域を含みかつ独特な根系形質が見られるCSSLs系統をさらに戻し交配する方法を併用することで、目的QTLs領域を絞り込む研究計画に変更し、研究を続けている。 イネの根系形成に関わる形質と農業形質との相関を調べるため、CSSLsを通常施肥区と無施肥区の圃場で栽培し、その収量比(低窒素耐性形質)を用いて評価した。通常施肥区と無施肥区の農業形質データはQTLs解析に用いた。QTLs解析の結果、11の農業形質に関わるQTLsが検出された。また3つの低窒素耐性に関わる形質も検出された。収量と低窒素耐性に関わる形質が第1染色体19.68MB-27.24Mbの領域に検出された。この領域は根系構造に関わる形質のQTLとも重複しており、根系に関わる形質が低窒素耐性に有用である可能性が示唆された。この形質に関しては、窒素の養分利用効率等のメカニズム等も機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コーネル大学から譲渡された材料について、さらに遺伝子型の評価を行った結果、その材料の遺伝子背景のノイズ部分が予想よりも多かったということが判明し、qRL1.1遺伝子の同定という点では当初の研究計画から、大きく遅れを取ることになった。しかしながら、コーネル大学から譲渡された材料の戻し交配だけでなく、次世代作物開発研究センターから提供されたノイズ領域の少ない材料も戻し交配し、新系統を作り出すことによってその遅れを取り戻すと同時に、さらなる学術的な知見を得られるようになったと考えられる。 圃場実験ではコーネル大学から譲渡された材料を用いて、根系形質と低窒素耐性形質の相関について研究を行い、当初の計画通りの進展が得られ、合計11のQTL領域を同定し、国際論文として発表した。圃場でのデータ収集の効率化や精度の向上のため、ワイヤレスネットワーク等の構築にも力を入れている点は当初の予定には入ってはいなかった点であり、現場の環境に適応をしながら、研究を進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
採用第2年度目では、1年目に創出した戻し交配系統の遺伝子型評価と表現型評価を行う。 Oryza rufipogonとCuringaの交配系統に関しては、第1染色体部位を中心に遺伝子型評価と根の表現型評価を優先して行う。共同研究先から譲渡された系統に関しては圃場での低窒素耐性の評価(低窒素施肥圃場での農業形質の評価)を優先して行う。国際熱帯農業センターは温暖な気候で年3回の圃場試験が可能であり、根の詳細の形態の調査を行ってから、圃場パフォーマンスを見る方法と圃場パフォーマンスを見てから、根の詳細の形態を調べるという2つのアプローチを実践し、新系統を選抜を実施する。2つのアプローチを実践することで、仮に根の形態と低窒素施肥圃場でのパフォーマンスに相関が見られなかった場合にも、根の形態と低窒素耐性のQTLをそれぞれ同定できる可能性があり、リスクマネージメントになり、また遺伝子型評価のコスト削減にもなっていると考える。新系統の選抜をより効率化するためにネットワークシステムやハイスループットフェノタイピングシステムを構築する。CIATで既存に導入しているドローンやマルチスペックカメラなどに加え、ラズベリーパイやUDOOなどの小型の基板とインターネット回線を使っての取得データのリアルタイム共有システムを実践する。ネットワークシステムやハイスループットフェノタイピングシステムは、CIATのシステム開発チームや東京大学生物環境情報工学研究室との共同研究によって構築を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Identification of QTLs associated with agronomic performance under nitrogen-deficient conditions using chromosome segment substitution lines of a wild rice relative, Oryza rufipogon,2016
Author(s)
Ogawa, S., Valencia, M.O. , Lorieux, M., Arbelaez, J.D., McCouch, S., Ishitani, M., Selvaraj, M.G., 38:103 Springer. DOI: , ACPP-D-15-00619.2. March 29, 2016
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Journal Title
Acta Physiologiae Plantarum
Volume: 38
Pages: 103
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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