2015 Fiscal Year Annual Research Report
安全保障における経済的相互依存の機能と限界に関する動学的分析
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15J02777
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 翔平 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 国際関係 / 経済的相互依存 / 商業的平和 / ゲーム理論 / 計量分析 / 政治学実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では経済的相互依存と安全保障の連関を明らかにすることを目的としており、主に次の3つの課題に取り組んだ。 第1に、経済的相互依存が国際紛争にどのように影響するのか、そうした安全保障への影響を考慮して国家はどのように経済的相互依存を管理するのかという問いに答えるための数理モデルの構築を行った。先行研究では経済的相互依存が平和を促進するという仮説と反対に阻害すると言うか説が存在するが、本研究では両者とも不充分であるという点を指摘した。その結果、経済的相互依存が中程度である場合に最も紛争の発生確率が高まるという仮説を導出した。 第2に、経済的相互依存の低下が国民の政権に対する不満に繋がるのかという問いに対してサーベイ実験を行うための予備調査に着手した。国際危機に関する架空のシナリオを被験者に読んでもらい、そのシナリオにおける政府の行動への支持を尋ねた。予備実験は、経済的相互依存の低下による不満よりも「旗のもとの結集 ("rally round the flag") 」効果のほうが大きい可能性を示唆した。 第3に、対立する二国間が第三国を味方につけるためにどのように経済協力などを行うのかという問いに対して、数理モデルを構築し、二国間の競争の中で第三国は政治的中立性を保ちつつ、経済協力を取り付けられることを示した。こうした成果は後述するように研究会等で報告し、ジャーナルに投稿するために論文として執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究は順調に推移しており、数理モデルによる仮説の導出とその報告を行った。なお、サーベイ実験については当初の研究計画にはなかったが、近年急速に支持額において実験的アプローチの有用性が認識されていることを鑑み、一部資金を繰り越して実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は(1)と(3)で数理モデルより得られた仮説の計量分析による検証を行うためのデータセットの構築と計量モデルの選定に着手する。また、(2)ではシナリオや設問等の実験デザインに改善の余地が見られたため、それらを克服するデザインを考察する。
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Research Products
(6 results)