2016 Fiscal Year Annual Research Report
有限生成群上のランダムウォークの性質とその応用についての研究
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15J02838
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 ちから 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ランダムコンダクタンス / ランプライターグラフ / ランダムウォーク / ソーシャルネットワーク / 優先的選択モデル / 混合時間 / カットオフ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度の研究の続きであるランダムコンダクタンスモデル上のランダムウォークの漸近挙動の解析に関する研究を完成させるとともに、申請者の研究テーマの一つであるランダムグラフに関する研究、さらにランプライターランダムウォークの混合時間に関する研究を行った。具体的には次のとおりである。 1. ランダム媒質の一つのモデルであるランダムコンダクタンスモデル上のランダムウォークの漸近挙動の解析の一つとして、escape rateの解析を行った。本研究は、近年のいろいろなモデルで得られえている熱核評価の応用に位置づけられ、この熱核評価とある種の可積分条件から結果を導いた。これらの結果を論文にまとめ投稿した。 2.ランプライターグラフとは、与えられたグラフの各頂点にランプ (0,1)を置き、ランプがついているまたはついていないという情報をも加味するグラフである。とくにフラクタルグラフグラフのランプライターグラフの増大列を考え、その上のランダムウォークの定常分布に十分近づく時間(混合時間)と、定常分布に急激に近づく現象(カットオフ現象)について考察した。そしてグラフのスペクトル次元が2より小さいか大きいかでカットオフ現象が起こるか否かが分かれるという結果を得た。これによってランプライターグラフのカットオフ現象とスペクトル次元との関連を明確にした。 3. 優先的選択モデル(プレファレンシャルアタッチメントモデル)とは、近年のソーシャルネットワークの発展に伴い現実のソーシャルネットワークを記述するためのランダムに定まるグラフモデルの一つである。このモデルの一般化を試み、グラフの直径にどのように影響を与えるかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の一つの研究課題であるランプライターグラフ上のランダムウォークの研究において、混合時間の研究を進めることができた点で、順調であると考えている。さらに申請者のもう一つの研究課題であるランダムグラフに関しても、優先的選択モデルの研究を進めることができた。研究計画の中での双曲群の研究は十分ではないが、申請者の研究状況はおおむね研究計画のとおり進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ランプライターグラフ上のランダムウォークにおいて、ランプの状態とランダムウォークの軌跡の幾何との関連に関する研究を進めたいと考えている。とくに整数格子でしか考察されていない研究をフラクタルグラフの場合について考察し、スペクトル次元の意義を明確にするよう試みたい。 ソーシャルネットワークモデルに関し、その上のランダムウォークの研究に発展させることを目標に、その幾何学的性質の研究を進めていくことを計画している。 さらに余力があれば、当初の研究計画の一つである双曲群上のランダムウォークの研究を遂行したい。本年度は双曲群上のランダムウォークの研究に関する著名な研究者が日本に長期滞在する予定があり、積極的に議論したい。
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Research Products
(7 results)