2016 Fiscal Year Annual Research Report
中国近世社会における占書の流布と怪異観の形成―明清の天文五行占を中心に―
| Project/Area Number |
15J02879
|
|---|
| Research Institution | Osaka Prefecture University |
|---|
Principal Investigator |
佐々木 聡 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 特別研究員(PD)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
| Keywords | 天文五行占 / 祥瑞災異思想 / 怪異観 / 鬼神観 / 術数 / 越南術数文献 / 占病 / 辟邪 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、北京・沖縄・パリにて調査を実施した。北京では国家図書館（新館・旧館）を中心に調査を行い、最近整備が進んでいる善本データベース「中華古籍資源庫」も併用しながら『承天紀』『乾占捷要』などの天文五行占資料を収集した。
沖縄の調査では、天文五行占書の現存が確認できなかったが、天文五行占（特に怪異占）の影響を受けた辟邪絵である〈白沢の図（白沢避恠図）〉について調査を行ったところ、従来よく知られている自了（城間清豊）筆〈白沢の図〉が、先行する伝雪舟筆および伝雪村筆の〈白沢の図〉とはやや異なる手本に基づくことが分かった。これは日本における〈白沢の図〉受容を考える上で重要な知見であり、本年度に刊行した『復元白沢図―古代中国の妖怪と辟邪文化』でも白沢をめぐる辟邪文物の展開を論ずる中で取り上げた。
パリでは、前年度に実施した越南写本の調査を受け、フランスの研究機関が所蔵する越南本天文五行占書の原本およびマイクロ資料につき調査を行った。アジア学会図書館では右図左文形式の天文占書『占天文書』を調査することができ、またフランス極東学院では前年度のハノイ調査では見落としていた越南本『天元玉暦祥異賦』を調査し、その中に地域性の強い怪異図を見出すなど一定の成果があった。
前年度から引き続き資料整理を進めてきた『礼緯含文嘉』については、伝本系統を三系統に整理し、それぞれの資料的価値について日本中国学会で報告したが、その後、新たな伝本についての指摘があったため、次年度に追加調査を行った上で、論文にまとめる予定である。
そのほか本年度は、怪異と鬼神の関係につき特に中世から近世にかけて多くの資料を存する釜鳴の怪異に着目し、論文を発表した。同時に釜鳴の背景にある「自然の怪異」についても検討を深めるため、敦煌占書S.6261を中心に唐代の通俗怪異占書『白沢精怪図』について再検討を行い、論文を発表した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の調査成果を踏まえ、本年度は予定していた調査地域を一部変更したが、主要な機関についてはおおむね計画通り調査を実施てきていると言える。また、変更した調査地域を含め、新たな資料や知見を得ており、順調に研究が進んでいると言える。
|
| Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、予想以上の資料を収集することができたので、特に重要な資料を選択しながら着実に整理を進めていきたい。また、分担者として参加している別の共同研究の課題ともかかわる資料が多いため、関連の研究者とも意見交換をしながら、成果を発表していきたい。
|
Research Products
(8 results)
