2015 Fiscal Year Annual Research Report
非白金水素エネルギー変換系に繋がるヒドロゲナーゼへの生物電気化学的アプローチ
Project/Area Number |
15J02900
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宋 慶盛 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 非白金水素エネルギー変換系 / バイオ電池 / 直接電子移動型酵素電極反応 / カーボンナノチューブ / 酸化的不活性化 / ガス拡散型電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,実用化に資する非白金水素/酸素バイオ電池を創出することである.平成27年度では,水素酸化酵素の欠点である酸化的不活性化反応の基礎理解と,酸素還元電極の最適化を行った. 前者において,酸化的不活性化反応に関与するパラメーターを速度論と平衡論の観点から考察した.解析結果を利用し,水素酸化における酵素電極反応を数値計算によって再現した.本シミュレーションによって,水素濃度が反応抑止に必須であることを見出した.本成果は,J. Electroanal. Chem.誌に掲載済みである. 一方,後者において,まず,酸素還元酵素に最適な電極の探索を行った.電極の素材として,高分散性カーボンナノチューブに着目した.本素材は,ナノレベルで厳密に制御された素材であり,本素材の長さの違いを活用することで,電極表面上の静電相互作用を制御できると考えた.各種電極において電気化学測定を行い,最適な電極を発見した.また,本電極は,出力に直結する触媒電流値で比較すると,従来の7.5倍性能が高かった.本成果は,Electrochim. Acta誌に掲載済みである. さらに,ガス拡散型電極の改良も行った.上記の素材を応用展開し,ガス拡散型電極を作製した.本電極は高いガス透過性を持っており,非常に効率よく酸素還元を行えることが分かった.本成果は,Electrochem. Commun.誌に掲載済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,水素酸化と酸素還元の二本の柱で成り立っている. 水素酸化に関しては,当初の予定通り,水素酸化酵素の触媒過程を基礎的な見地から理解することができた.本知見は,水素酸化反応の欠点を克服するために必須であり,大きな成果だと考えている. 一方,酸素還元に関しては,当初は,炭素微粒子とフッ素樹脂を配合したガス拡散型電極を作製する予定であった.本実験はある程度進行しているが,論文出版などの段階には至らなかった.しかしながら,別途行っていた実験から,ある長さを持つカーボンナノチューブが酸素還元酵素と相性の良い素材であることが判明したため,平成27年度は,本素材に関して,主に実験を行った. 以上が,現在までの進歩状況である.本研究の目的は,実用化に資する非白金水素/酸素バイオ電池を創出することである.そのため,利用する素材の違いに変更はあったものの,全体的には,順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,実用化に資する非白金水素/酸素バイオ電池を創出することに注力する.水素酸化と酸素還元の両者において,基質である水素と酸素の供給は電極の性能を大きく左右する.これらの基質は溶解度が低いため,ガス状基質を直接利用できるガス拡散型電極を利用するのが一般的である. 本電極には,炭素材料が主に用いられている.現段階では,多孔質炭素とフッ素樹脂を配合したものと,カーボンナノチューブを利用したものの二種類を開発している.ガス拡散型反応系は非常に複雑な構造を持つため,基質や酵素の種類,反応条件などの影響を強く受ける.そのため,負極に用いる水素酸化酵素と正極に用いる酸素還元酵素に応じて,電極材料を選択し,最適化を行う必要があると考えている.よって,並行して二種類のガス拡散型電極の研究を行う予定である. 最終的に,最適化を行った負極と正極を組み合わせ,非白金水素エネルギー変換系(水素/酸素バイオ電池)を構築する予定である.
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Research Products
(4 results)