2015 Fiscal Year Annual Research Report
アマゾン先住民社会からの環境ガバナンスの再検討-移動性と共同性に着目して
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15J02903
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大橋 麻里子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アマゾン / 資源管理(利用) / コミュニティ / 生業 / 食物分配 / 合意形成 / 参加型森林管理 / 住民主体 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる平成27年度は、アマゾンの在来社会を対象にした資源管理(利用)に関する先行研究の議論の整理を行った。資源管理(利用)について、地域社会の慣習という点から論じてきたものに人類学的コモンズ論があげられる。(欧米)コモンズ論のこれまでの議論は、ある特定資源の持続的管理・利用を前提とする批判をうけてきたことから、近年ではソーシャル・エコロジカル・システムといった対象社会と自然(環境)とのかかわりに言及する視点や、クロス・スケール・リンケージといった異なるアクターにおける協働の構築といった枠組みが提示されるようになった。しかしながら、近年では対象社会の変容を詳細に叙述する姿勢は弱まりつつあることを、本研究では指摘した。 本研究では、ペルーアマゾンの氾濫原に居住する先住民シピボの集落を対象に、とくには外部者とのかかわりが強まった近年において、彼ら彼女らの生活の実態・変容を明らかにすることを課題とした。在来的に利用してきた資源をめぐる生産と消費、そしてグローバル資源である木材をめぐる地域社会内外でのアクセス(利用)の変化について明らかにした。 以上のことから、本研究は、先駆的に開発プロジェクトが導入されてきたアマゾンの資源管理・利用の研究動向を示しただけではなく、他の熱帯林地域との相対化からラテンアメリカの援助動向の特徴を明かにすることができた。また、生産・消費に関する定量的データは、アマゾン氾濫原に住まう先住民が、開発の影響をうけるなかでの生活変化を示した生態人類学的価値があると評価できよう。さらに、外部者が地域社会にかかわる際の「レジティマシー」を考察した点は、アカデミズムにとどまらず実践的視座を提示することにも成功したといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで日本語では整理されてこなかった、アマゾンを中心とする資源管理・利用および先住民の生業をめぐる議論について概要を整理できた点で、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
アマゾンの森林をめぐって多様なアクターが地域社会に介入するなかで、広範囲におよぶ先住民の生活戦略の全体像を明らかにすることが、本研究の今後の課題である。今後は、複数の拠点にまたがる先住民の生活実態とともに、国際会議等における森林保全といったグローバルな言説形成過程についての調査・分析を進める。
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