2015 Fiscal Year Annual Research Report
公私協働時代のストリートレベルの官僚制拡張理論―ワーカーズコレクティブを事例に
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15J02929
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
菰田 レエ也 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 市民社会セクター / 中間支援組織 / 社会的企業・NPO / 協同組合間協働 / 労働と福祉 / 生活困窮者支援 / 生活クラブ / 労働者協同組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「福祉多元社会」という現代的状況にあわせて、「国家セクター」、「市民社会セクター」、両セクターの板挟み状況に置かれた団体(第一線機関=社会運動組織)という三者関係の協働状況モデルを、福祉領域で活動するワーカーズ・コレクティブ(以下、W.Co)運動を事例に、提示することである。 2015年度の研究計画は、市民社会セクターのコア組織と市民社会セクターの末端機関にあたる団体がどのような協働の形を組織化しているのかを明らかにしてゆくことであった。研究成果として、理論的な側面と事例的な側面で大きく2つのことを明らかにすることができた。 第1に、市民社会における組織化の形を分析するための理論的枠組みをレベルごとのマネジメントの課題に分けて、明らかにすることができた。具体的には、現場の団体から見た場合のマネジメントの課題が一方ではあり、その一方で現場の団体を支える中間支援団体のマネジメントの課題が存在し、現場の団体と中間支援団体による協働運動の中で市民社会セクターが組織化されていることを理論的に明らかにすることができた。 第2に、W.Coと生活クラブの展開過程と協働の形を具体的に明らかにしてゆくことができた。W.Coと生活クラブのこれまでの運動の展開過程、福祉領域のW.Coが市民社会セクターの中においてどのような位置にあるのか(市民社会セクター内部の布置関係)を調べた。その結果、福祉領域のW.Coの活動は、単協ごとの生活クラブ(特に、神奈川県、東京都、千葉県の生活クラブごと)の動向に左右されてきたことが明らかになった。また、福祉領域のW.Coと生活クラブグループの動向を、総体として見ると、市民社会セクターの中でも特に「生活困窮者支援」のイシュー(例えば、ホームレス支援)を重視した形で活動を展開しようと変えてきたことも明らかとなってきた。以上が2015年度の研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2015年度は、社会福祉から、市民社会、労働者協同組合、生活協同組合、社会的企業・NPOに至るまで、様々なテーマを横断した形での調査研究活動を遂行することができた。特に、市民社会セクターの組織的動態を捉えるための理論的枠組みの整理の進捗状況が著しく、現場のレベルのマネジメントの課題、それを支える中間支援団体のマネジメントの課題についてそれぞれ具体的に整理してゆく段階まで進んだ。このような現場の団体と中間支援団体の協働の形が一つの市民社会セクターのあり方を構成するというモデルを仮説的に示すところまで研究を発展させることができた。 以上のようなモデルを構築できた背景には筆者の調査研究活動が海外にまで及んだところが大きい。すなわち、具体的には、英国イーストロンドンでの労働者協同組合、社会的企業間の連帯経済についての調査活動を遂行できたことが、上記のモデルを構想してゆくことにつながった。 さらに、ワーカーズ・コレクティブ―生活クラブの連携のあり方も、各単協(神奈川、千葉、東京)ごとの福祉戦略の差異によって異なることも明らかになってきた。研究代表者のこれまでの研究計画では、東京のワーカーズ・コレクティブ―生活クラブ(ACT含む)の在り方のみを対象としてきたが、他の県との差異の中で捉える必要があるということが分かってきた。 また、研究代表者は、2015年度の研究成果を精力的に発表することもできた。例えば、韓国社会学会にて発表を行うなど、研究成果の発表は、国内にとどまらず、海外にまで発展させることができた。 以上の結果は、筆者が当初計画していた研究成果以上のものである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、市民社会セクターの組織的動態を捉えるための理論的枠組みを構築しつつある。具体的には、現場の社会的企業・NPOマネジメントの課題、それを支える中間支援団体のマネジメントの課題について理論的な課題と枠組みについて整理しつつある。 2016年度からは、社会運動・社会福祉政策の展開過程をまとめる作業に加えて、それぞれの理論的課題を実証的に明らかにしてゆく。例えば、研究代表者が作った中間支援団体機能評価表を用いて、現場の中間支援団体が実際にどのような中間支援の機能を果たしているのかを明らかにする。また、例えば、現場のNPO団体が、事業を展開してゆく上で、どのような資源を獲得する戦略(資源のHybrid戦略)を練っているのかを収支構造から実際に明らかにする。これらを調べてゆくことで、行政資源への依存度合(国家セクターと現場のNPOとの関係性)、市場資源への依存度合い、市民社会セクター資源への依存度合い(中間支援団体や地域のボランティアや社会関係資本)などを明らかにする。 2016年度では、研究代表者が作ってきた市民社会セクターに関わるマネジメント理論の枠組みを、フィールドワークの結果得られたデータと突き合せて考察・検討し、より説明力のある理論的枠組みの構築を目指す。これが、2016年度の課題である。そのため、データの収集作業を引き続きおこないたい。 また、実際のフィールドワークのレベルで考えれば、現場の末端団体とコア団体の連携のあり方については、生活クラブグループで言えば単協(神奈川、千葉、東京)ごとにモデルが異なることも明らかとなりつつあるので、その差異を明確にすることも、2016年度の研究課題である。
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Research Products
(6 results)