2015 Fiscal Year Annual Research Report
異文化間コミュニケーションにおける日本語母語話者と非母語話者の対等性について
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15J02943
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
嶋原 耕一 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 話題選択 / 話題展開 / 会話参加 / 対等性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年6月から9月にかけて、会話データの収集を行った。会話は全て初対面会話であり、母語話者16名と非母語話者16名の協力を得て、母語場面8会話と接触場面32会話のデータを録音、録画した。さらに母語話者と非母語話者の学びに迫るために、両者を異文化間コミュニケーションへの参加経験によって統制した。分析の観点としては、話題選択と話題展開に注目した。 話題選択について、共通点に注目した話題を選ぶのか、相違点に注目した話題を選ぶのか分析した。結果、参加経験の多い母語話者と非母語話者が共通点話題を選ぶことが多かったのに対して、参加経験の少ない母語話者と非母語話者は、相違点話題を選び続けることが多かった。どちらの話題も重要だが、相違点話題ばかり選択された会話の参加者からは、「個人として仲良くなることはできなかった」「日中の一般的な事情を話し合っただけで、授業みたいだった」という声も聞かれ、初対面雑談会話で相違点話題ばかり選択することには、注意が換気された。これらの分析結果について、二つの学会で発表した。 話題展開については、話者が話し手として参加するのか、聞き手として参加するのか、分析した。結果、母語話者か非母語話者かに関わらず、参加経験の少ない話者は話し手として、参加経験の多い話者は聞き手として話題に参加することが多かった。つまり、参加経験の多い話者が多く質問しながら、会話の主導権を握っている様子が確認された。ただインタビューからは、「自分の話もしたかったけれど、相手が質問してくれなかった」という語りも聞かれ、彼らが必ずしも望んで聞き手となっているわけではないことが、示唆された。対等な会話参加のためには、両者が話し手として、お互いに情報提供し、自己開示を進める必要があるだろう。この結果については、東京外国語大学国際日本研究センターの『日本・日本語学研究』第6号に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず当初の計画通り、データ収集を全て終わらすことができた。データ収集が終わらなければ分析にも移れないが、27年度の6月までにデータ収集を終わらすことができたことで、その後の計画を前倒しして進めることができた。また非常に時間のかかる文字化資料の作成も、特別研究員奨励費を用いて外部業者に委託することで、早くに作成することができた。 その後の分析についても、分析結果については仮説と異なる点もあったが、分析自体は計画通り進行した。その分析結果については、当初の計画を上回る三つの国内学会と二つの国際学会で発表することができた。積極的に結果を発信することで、多くの研究者と意見を交換することができ、研究を大きく展開することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは異文化間コミュニケーションにおける、話題選択と話題展開に関する言語形式及び内容について、それぞれ別に分析を進めてきた。平成28年度には、これまでの各論をまとめることによって、研究テーマである母語話者と非母語話者の対等性に迫りたい。既に各論の中で、対等性に結び付く、または対等性を損ないうる多くの特徴が観察できている。今後はそれらを総合的に考察し、そもそもの目的である教育に還元していきたい。 母語話者と非母語話者を対象とする教育の枠組みから、両者の会話参加に関する対等性を論じることによって、具体的にどのような教育のかたちが可能であるのか、探っていくつもりである。また昨年度に引き続き、今年度も積極的に学会で発表し、研究成果を発信していきたい。
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Research Products
(7 results)