2015 Fiscal Year Annual Research Report
フェーズフィールド法によるMoSi2基複相超高温耐熱材料の最適合金設計
Project/Area Number |
15J02985
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山﨑 敏広 東北大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | フェーズフィールド法 / MoSi2基合金 / 界面偏析 / 構造レッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
低炭素社会実現に向けて、火力発電用ガスタービン翼材料のさらなる高効率化が必要とされている。従来のタービン翼材であるNi基超合金を遥かに上回る新しい超高温耐熱材料として、MoSi2基合金が提案されており、特にラメラ組織を形成するMoSi2/NbSi2合金と、ラビリンス組織を形成するMoSi2/Mo5Si3合金は、異相界面制御による特性制御が可能と注目されている。本研究では、組織形成の連続体モデルシミュレーション手法であるフェーズフィールド法を用いて、MoSi2基合金実用化に不可欠な組織安定性向上のため、MoSi2基合金中の添加元素の界面偏析や、微細組織形成のメカニズム解明、組織安定化の最適添加元素の探索を行っている。 今年度は、MoSi2/NbSi2合金の研究を前年度から引き続き行っただけではなく、ラビリンス組織を形成するMoSi2/Mo5Si3合金についてもシミュレーションモデルを展開した。このMoSi2/Mo5Si3合金についてはC11b構造のMoSi2相とD8m構造のMo5Si3相が一定の方位関係を持つことでラビリンス組織を形成する。また、本合金の凝固方向に平行な断面において、凝固方向から約15°傾いた組織が観察されている。この15°の傾きは、階段状の界面すなわちレッジが形成されることに由来していると考えられている。レッジを考慮したシミュレーションの報告は殆ど無いため、弾性ひずみエネルギーにレッジの影響を考慮した本研究は、学術的に新しい分野を拓いていると言える。実際に行われたシミュレーション結果から、この15°の傾きは、レッジが形成されることに由来していることが結論づけられた。 本研究により、MoSi2基超高温耐熱材料の早期実現に向けた組織安定性向上に貢献すると共に、シミュレーションモデルを他の合金系へと応用していくことが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画予通り、外部応力やクリープひずみといった実使用環境を考慮したシミュレーションモデルや、弾性率が系全体で均一なものと仮定するのではなく、場所により変化する弾性不均質を考慮したシミュレーションを行うことができた。また、界面に存在するレッジを考慮したMoSi2/Mo5Si3合金のシミュレーションモデルの構築も行い、実際に組織観察で見られているような斜めに伸長した組織を再現することができており、今年度の研究では、十分な進捗が得られていると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
実時間に対応したより精査なシミュレーションを行うために、合金中の天下元素の拡散データや相変態速度の実験による測定が必要となる。また、MoSi2/Mo5Si3合金に関しては、弾性ひずみエネルギーや界面エネルギーの異方性により、組織形状が大きく依存するため、界面領域に十分な数の差分格子を用いることや、Kim-Kim-Suzuki(KKS)モデルを導入することも検討する。界面幅が変わると界面領域内で化学的自由エネルギーが過剰なエネルギーを生じさせてしまうため、界面エネルギーが変化するように作用し、界面幅に依存して結果が変わってしまう。KKSモデルでは界面幅に濃度依存性が無く、界面領域における化学的自由エネルギーの過剰を生じさせないシミュレーションを行うことができる。
|
Research Products
(4 results)