2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J03091
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河本 陽介 九州大学, 数理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 無限粒子系 / ランダム行列 / 無限次元確率微分方程式 / Dirichlet形式 / 無限次元干渉Brown運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ランダム行列とは、各成分が独立同分布な確率変数である行列のことを言う。このランダム行列の固有値を解析したい。固有値分布はランダムな(有限)粒子系と見なすことができ、各粒子は対数ポテンシャルでの相互作用をする(対数ガス)。さらに、この系の粒子数を無限大にとばすスケーリング極限をとることにより、対数ポテンシャルで相互作用するランダムな無限個の粒子系が得られる。 当研究の目的は、このような無限粒子系の自然な確率力学を調べることである。つまり、各粒子が相互作用ポテンシャルでの影響下で、Brown運動をするモデル(無限次元干渉Brown運動)を調べたい。無限次元干渉Brown運動は、無限次元確率微分方程式で記述される。 特に、当該年度は対数ガスの普遍性に対応する無限次元確率力学の普遍性についての研究を行った。対数ポテンシャルは長距離相互作用であり、自由ポテンシャルでの摂動に関して普遍性を持つ。つまり、有限次元の段階で自由ポテンシャルで摂動した対数ガスのスケーリング極限は、自由ポテンシャルに依らない無限粒子系になる。そこで、摂動した対数ガスに対応する有限次元干渉Brown運動は、粒子数無限大の極限で、自由ポテンシャルに依らない普遍性な無限次元干渉Brown運動になることを示した。 この力学的普遍性は、長距離相互作用特有の現象を引き起こす。つまり、有限次元確率微分方程式の粒子数無限大の形式的な極限と、実際の極限の方程式は一般には異なる。本来、このような事を示すためには、相互作用項の非自明な計算が必要であった。しかし、当該年度の研究ではDirichlet形式の収束概念を用いることにより、モデルごとの計算なしにこのような現象を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度には、対数ガスの普遍性に対応する無限次元干渉Brown運動の普遍性を、Dirichlet形式のMosco収束を用いて示した。 自由ポテンシャルがある有限粒子系の対数ガスを考える。自由ポテンシャルがある適当な仮定を満たすとすると、この点過程は熱力学極限で自由ポテンシャルに依らない無限粒子系の点過程に収束する(対数ガスの普遍性)。有限粒子系と無限粒子系の点過程それぞれのdistorted Brown運動を考えると、これらには対応するDirichlet形式が存在する。このとき、無限粒子系のDirichlet形式の一意性を仮定すると、有限粒子系のDirichlet形式は粒子数無限大の極限で無限粒子系のDirichlet形式にMosco収束することを証明した。よって、適当な条件の下では対応する確率力学は緊密であることを合わせると、有限粒子系の確率力学は無限粒子系のそれに弱収束することが言える。特に、有限粒子系の確率力学は自由ポテンシャルに依っているが、粒子数無限大の極限を取ると、自由ポテンシャルには依らない無限粒子系の確率力学に収束する。
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Strategy for Future Research Activity |
古典的なDonskerの不変原理は、様々な結果に応用され、確率論の発展を促した。今回の結果は、ある意味ではランダム行列版のDonskerの不変原理と見なすことができる。よって、この結果も色々な応用が可能なはずであり、その探求が今後の研究の方針の1つである。 また、収束定理そのものの強化も今後の課題である。その方針はいくつかあるが、例えば、定理が適用できる初期条件の仮定を弱めることなどが挙げられる。
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Research Products
(6 results)