2015 Fiscal Year Annual Research Report
近世スウェーデン塩取引情報の分析 ―在ポルトガル『領事報告書』を中心に
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15J03126
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
齊藤 豪大 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 塩 / スウェーデン / 重商主義 / ポルトガル / 領事報告書 / スウェーデン航海法 / ニシン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実績は以下の通りである。第一に、在ポルトガルスウェーデン領事経験者であり、かつスウェーデン重商主義者であったアンデシュ・ノルデンクランツ(Anders Nordencrantz, 1697-1772)の刊行史料の分析を行った。第二に、18世紀スウェーデン塩取引において影響のある施策の一つであるスウェーデン航海法の分析、および関連する諸研究の検討を行った。第三に、本研究課題における最重要史料である『領事報告書』の収集と分析を開始した。 1)在ポルトガルスウェーデン領事を経験(1727-1738)したアンデシュ・ノルデンクランツの刊行史料分析を通じて、スウェーデンにおける塩供給の問題、さらには塩の問題と密接な関係がある漁業の問題について特に研究を進めてきた。スウェーデンにおける製塩環境の問題については『北欧史研究』に掲載された。本稿では、上記のノルデンクランツがスウェーデンの塩生産問題についていかなる認識をもっていたのかについて検討したものである。また、スウェーデン漁業、特に漁業経済振興問題に関するノルデンクランツの構想について検討した内容を世界経済史会議にて発表し、様々なフィードバックを得ることができた。 2)18世紀スウェーデンにおける重要な施策の一つであるスウェーデン航海法の分析を行った。本史料の分析および関連する先行研究の分析を通じて、スウェーデン航海法起草に関わる利害関係者の様相を明らかにし、その一部を法文化学会において発表した。 3)本研究課題において最重要史料の一つである「領事報告書」の収集を行った。スウェーデン王立軍事文書館にて史料収集活動をおこなった。具体的には、18世紀において在ポルトガルスウェーデン領事が記した報告書やその他関連史料を収集し、分析を開始した。また、同国滞在中には現地の書店にて関連する文献を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本研究課題における重要史料である『領事報告書』の収集、分析を計画通り進めたこと。さらに、漁業や海洋政策の観点からも塩取引の問題について検討することができたため。 また、研究成果については学会報告や論文投稿を行うことができたため、平成27年度の研究は順調に進展したと判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、主に4名の『領事報告書』の分析に注力し、セトゥバルをはじめとするポルトガル産の塩生産・塩輸出についてどのような情報を有していたのかを究明する。そして、その情報をふまえ、スウェーデンの輸入産品としてポルトガル産塩を領事がどのような評価を行っていたのかを考察する。さらに、スウェーデン商務顧問会議の議事録などを活用し、ポルトガルとの塩取引関係だけではなく、フランスなどとの塩取引についても検討する。 これに加えて、塩の使用用途に関する問題として漁業についてこれまで検討を行ってきたが、この点についても引き続き検討を行うこととする。
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Research Products
(5 results)