2016 Fiscal Year Annual Research Report
運動学習記憶過程における情動の役割に関するシステム神経科学的研究
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15J03233
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横井 惇 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 運動学習 / ノルアドレナリン / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)運動課題遂行中の脳機能画像計測および多変量fMRI解析手法の開発 前年度から継続中の課題で、高磁場(3T)MRI中での手首動作を用いた運動課題中の脳活動データを取得し、得られた脳活動データに対して西オンタリオ大学のDiedrichsen教授と共同開発中の解析手法を適用した。その結果、1) 運動を行っている手首と同側の運動関連領野(第一次運動野、背側運動前野など)においても運動方向などの情報が表現されていること、2) 両手首を同時に動かす際にはそれぞれの手首の運動方向などの情報が非線形に統合されていることが行動実験によって知られているがそれは背側運動前野や後頭頂皮質などの領域で行われている可能性があること、などが明らかになった。 (2)運動学習中の瞳孔径測定実験 前年度から継続中の課題で、平成28年度においては、運動学習課題として確立された実験系である腕到達運動中の力場外乱に対する適応課題を用い、この課題中に同時に瞳孔径の測定を行った。同西オンタリオ大学のJeffrey Weiler博士の協力も得て、現在までに共同で28人分のデータを取得した。解析の結果、a)瞳孔径は運動の開始から終点に向かって特徴的な時間的パターンで拡張すること、b)その拡張量は外乱への適応過程で運動誤差の推移と相似した時間的発展を示すこと、c)運動開始前の瞳孔径と運動の終点誤差との間に関連が存在する、という興味深い結果を得た。 (3)運動学習中の瞳孔径変動を説明する計算モデルの検討 (2)で得られた外乱適応過程における瞳孔径の変動は、運動の誤差(=surprise)を表現しているのか、もしくは外乱による環境の不確実性(=uncertainty)の変動を表現しているのか、という2通りの可能性が考えられる。これを切り分けるために、階層ベイズモデルを用いたシミュレーションおよびモデルフィッティングを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度より進めている「運動課題中の脳機能計測」と「多変量解析を用いた脳機能画像解析手法の開発」は順調に進んでおり、渡航先からの帰国後に行われた国内学会でも高く評価された。さらに、 同手法を用いた研究論文に関して現在少なくとも2本の論文を準備中であり、早ければ平成29年度中に科学雑誌に出版される見込みである。 また、平成28年度における特に重要な研究成果として「運動学習課題中の瞳孔径の測定」において「運動学習の瞳孔径の詳細な時間変化パターン」を世界で初めて明らかにしたことが挙げられる。加えて、数理モデルを用いたシミュレーションでも興味深い結果を得ており、「運動学習におけるノルアドレナリンの役割」の解明に対して重要な示唆を与える知見を着実に得ていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、運動中における瞳孔系の特徴的な時間的応答パターンの持つ意味を、青斑核-ノルアドレナリン系の解剖学的構造に着目しつつ検討すること、数理モデルを用いて試行間における瞳孔径の変動パターンが誤差を表現しているのか、それとも環境の不確実性を表現しているのかをうまく分離する実験デザインを決定すること、さらには音声刺激などを用いた介入実験を行いモデルの妥当性を評価することである。
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Research Products
(9 results)