2016 Fiscal Year Annual Research Report
異相界面を機能発現場とするサイアロン基白色発光蛍光体の材料設計と開発
Project/Area Number |
15J03274
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂野 広樹 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 蛍光体 / X線粉末回折 / 不規則構造 / イーリマイト関連化合物 / アパタイト型ゲルマン酸ランタン / 配向多結晶体 / 構造相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発した蛍光体の発光特性は、サイアロンポリタイポイド化合物の不規則構造が影響すると考えられる。本年度は、同様の発光メカニズムを発現する化合物を探索し、蛍光体母体材料として応用することを目的とした。本研究に密接に関連するX線粉末回折法を用いて、蛍光体母体としてのイーリマイトの関連化合物Sr4[Al6O12]SO4の相転移挙動を解明した。示差熱分析で相転移開始温度を調査し、298 Kと573 KでX線粉末回折パターンを収集した。リートベルト法に加え、最大エントロピー法(MEM)とMEMに基づくパターンフィッティング法の併用で、構造モデルのバイアスが取り除かれた3次元電子密度分布を決定し、未知構造を解明した。298 Kでの結晶構造は、空間群 Pcc2の規則構造モデルで表現された。573 Kでの結晶構造はSr原子と、S原子に配位するO原子([SO4]四面体を形成)が分割された不規則構造モデル(空間群 I23)で表現された。高温ラマン分光法で、相転移温度前後で[SO4]四面体の動的な再配列は起きていないと結論づけた。 さらに、アパタイトを母体とする蛍光体の異方性発光に着目した。La2SiO5の無配向多結晶体と[GeO+1/2O2]ガスの反応で得られたアパタイト型ゲルマン酸ランタン(LGO)配向多結晶体の反応速度を調査するため、焼成温度を1573-1723 K、反応時間を2-50 hとして、計20種類の試料を作製した。ラマン分光スペクトルには[GeO5]多面体に起因するバンドが確認され、結晶構造が、格子間に欠損したO原子が存在する不規則構造モデルで表されると確認した。X線回折で配向度を算出したところ、0.94-0.99と非常に高い値を示した。各温度での反応次数を算出した結果、0.489-0.501となり、LGO多結晶体内でのGeO2成分の体積拡散が、反応の律速段階と結論づけた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
蛍光体母体として応用が期待されるイーリマイトの関連化合物Sr4[Al6O12]SO4の相転移挙動を調査し、相転移開始温度と結晶構造モデル、3次元電子密度分布を解明した。特に573 Kでの結晶構造には、Sr原子位置と、[SO4]四面体を形成するO原子の位置に不規則性を発見した。結晶構造の解明により、添加元素が占有可能な結晶学的席を絞り込み、発光特性に影響する配位環境の予測が可能になると期待される。また、相転移挙動の解明により、発光の温度特性に関する知見が得られるなど、当初計画していた以上の波及効果が期待される。 異方性発光が期待されるアパタイト型ゲルマン酸ランタン(LGO)配向多結晶体を、La2SiO5の無配向多結晶と[GeO+1/2O2]ガスの反応で作製し、配向多結晶体層の成長速度を明らかにした。X線回折法で、多結晶体の正確な配向度を算出する手法の開発に成功した。焼成温度が1573-1723 Kの試料で反応次数を算出し、本反応の律速段階が、LGO多結晶体内でのGeO2成分の体積拡散であると明らかにした。今後LGO配向多結晶へ希土類元素を添加する手法を開発する際に成長過程に関する知見を活せるため、本研究も当初の想定以上の波及効果が期待される。これら応用研究の成果は、当初の計画以上のものであり、本研究成果の価値を著しく高めるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で解明したイーリマイトの関連化合物Sr4[Al6O12]SO4の結晶構造モデルを元に、発光特性の発現と向上につながる知見を得ることが今後の課題である。不規則構造を検討することで、添加可能な元素種や配位環境の決定、温度特性の解明が期待される。 本年度の研究で解明したアパタイト型ゲルマン酸ランタン配向多結晶体の成長過程に関する知見を利用し、発光メカニズムを解明する実験に取り組む。不規則構造と微細組織に注目し、添加元素の配位環境を制御する方法の確立が今後の課題である。
|
Research Products
(7 results)