2016 Fiscal Year Annual Research Report
一七世紀中国の財政構造から見た明清両王朝の財政とその連続性に関する研究
Project/Area Number |
15J03347
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
時 堅 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 明末 / 度支奏議 / 計部奏疏 / 財政 / 軍事費 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、十七世紀、中でも崇禎年間(1628-1644)を中心として近世中国における国家財政の実態を分析することにより、明清財政構造の特質とその連続性を解明することを企図する。明末崇禎年間、明朝は内憂外患による財源枯渇に直面し、既存の問題点を解消しつつ新財源を模索する必要に迫られた。即ち、平時には現われることのない近世中国王朝の財政構造が抱える課題が析出した時期であったと言える。そして明朝に続き漢土を支配した清朝にとれば、崇禎年間の財政とは崩壊した反面教師であるとともに、踏襲すべき先例でもあった。このような認識に立って、当該時期の財政構造を管理機構、収入、支出の三つの角度から分析し、問題の解明を試みる。 2015年度に、財政記録に関わる諸史料(畢自厳の『度支奏議』など)を整理・データ化しつつ、財政管理の面から、財政の管理官庁である戸部の職能を明らかにし学界へ公表した。2016年度においては、史料整理の作業を継続し、明末財政収支について調査・整理した成果を博士論文の中間報告として発表した。前年度と比べて、本年度における史料整理の範囲は明の万暦・天啓年間(1573-1627)までに拡大した。なぜなら明の最末期における財政構造の特質をより明らかにするため、その直前の時代における財政実態に対する分析は不可欠からである。具体的に言うと、趙世卿『司農奏議』、汪応蛟『計部奏疏』、李起元『計部奏疏』、朱燮元『朱少師奏疏鈔』などの史料をも整理・データ化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015・2016年度に収集した、財政記録に関わる諸史料を順調に整理し、データ化した。さらにその解析作業を行い、一定の成果を得ることができた。2015年度に財政管理の面から、財政の管理官庁である戸部の職能を明らかにし学界へ公表した。2016年度に明末における一部の軍事費の徴収とその支出についての解明を通じて、明末財政収支の特質を明らかにした。その研究成果は学界へ公表しなかったが、博士論文の中間報告の一部として発表し研究室の先生・先輩の意見や助言を得た。 以上の点から、達成度については「おおむね順調に進展している」と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づいて引き続き進めて行きたい。2015年度に財政の管理機構である戸部の職能に関する研究成果を公表した。2015・2016年度に財政記録に関わる史料を整理し、データ化した。前年度に行った博士論文の中間報告の成果を公表する予定である。まずは2017年5月に開催される東北中国学会で、明末における一部の軍事費の徴収とその支出について発表する予定である(確定)。その後、意見や助言を得たうえで、学術論文として投稿する。次は、明末に生じた深刻な税金滞納の問題を解消するため行われた考成法(官僚業績の評価制度)について、2017年12月、台湾の中央研究院で行われる中央研究院明清研究国際学術研討会で発表する予定である(未確定)。最後は、今までの研究成果を公表しつつ、博士論文を作成する。
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