2016 Fiscal Year Annual Research Report
創薬ツールとしてのプロテインキナーゼ活性網羅的解析を目指した新規リン酸基認識錯体
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15J03368
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
登 貴信 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | プロテインキナーゼ / ペプチド / アミノ酸 / リン酸化 / がん / 錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの体内で生体制御を行っているタンパク質リン酸化酵素 (プロテインキナーゼ:PK) の過剰な酵素活性は、がんに繋がることが知られている。そのため、PK の過剰な酵素活性を抑制する PK 阻害剤は、抗がん剤になり得る。阻害剤が PK 活性をどれほど抑制するかという阻害能の評価には、PK 活性検出法が不可欠であるが、従来法は、安全管理の面や利用する抗リン酸化アミノ酸抗体の特異性の低さといった問題から、その普及が限定されている。そこで本研究では、リン酸基認識錯体を利用し、これらの問題を克服することで、汎用性の高い新規 PK 活性検出法の開発を目指した。 申請者は、リン酸基認識錯体を用いた新規 PK 活性検出システムを自ら考案した。本法では、従来法の問題の原因となっていた放射性同位体や抗リン酸化アミノ酸抗体などの利用がなく、その代替としてリン酸基認識錯体を用いる。さらに、蛍光を発するナノ粒子である量子ドット (QD) と組み合わせることで、より感度の高い検出法の開発を試みた。 具体的に行った研究としては、利用する材料の合成と検出条件の最適化である。本法で利用する材料は蛍光基を修飾した PK 基質ペプチドとリン酸基認識錯体を表面修飾した QD である。これらの合成、調製後、混合モル比の最適化等の条件検討を行った。リン酸基認識錯体修飾 QD の精製や検出条件の最適化に苦労したが、精製にはカラムを利用し、条件の最適化には溶媒中のイオンの濃度なども含めた総括的な条件の検討を行うことで解決することができた。条件の最適化が完了したことで、本検出法の感度を最大限にすることができると期待され、意義のある結果が得られたと考えられる。 今後は、実際の酵素を利用し、PK 酵素活性検出が可能かどうかを評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、リン酸基認識錯体修飾 QD の精製や検出条件の最適化において問題が生じた。しかし、学会参加による当該分野の研究者の方々とのディスカッションや文献調査等を通して多くの情報を収集し、その情報に基づいて様々な策を講じた結果、上述した問題を解決することができた。解決に時間を要したものの、最終的には期待していた通りの結果が得られ、また当初の計画であった、条件の最適化という段階までしっかりと研究を進めることができた。今後も順調に進展すれば、当初の予定よりもさらに先の実験を進めることができると期待できる。したがって、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると言える。 これからも学会、特に国際学会へ積極的に参加することで、日本人のみならず海外の研究者の方々ともより交流を深め、研究を遂行する上で何か問題が生じても、人的ネットワークや文献調査能力を駆使し、粘り強く研究に邁進していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、これまで蛍光基を修飾した PK 基質ペプチド、リン酸基認識錯体を表面修飾した QD の 2 つを組み合わせた PK 活性検出法を考案し、各材料の合成や調製、および検出条件の最適化を行ってきた。 そこで、今後は、まず実際に PK 活性検出が可能かどうかを評価していく。これまでに決定したリン酸化前後で最大の蛍光変化が期待される、つまり検出感度が最も高くなる最適な検出条件において、実際に PK 精製酵素の活性検出を行う。具体的には、蛍光修飾 PK 基質ペプチドに加える PK の濃度を変化させ、リン酸化率を変化させることで、蛍光強度に変化が見られ、PK の活性検出に有用かどうかを確認する。 活性検出に成功した場合、次は H-89 のような PK 特異的な阻害剤を用いて、その阻害剤の 50% 阻害濃度 (IC50) を算出する。具体的には、蛍光修飾 PK 基質ペプチドのリン酸化反応を異なる濃度の阻害剤共存下で行い、その結果から得られた IC50 と既報値を比較する。これにより、本検出システムが阻害剤探索に有用であることを示す。 また、上記の実験に成功した場合、同様の PK 活性検出、阻害剤探索を精製酵素ではなく、細胞破砕液でも行っていく。さらに、ターゲットとする PK の種類も現在用いている PKA 以外の Src などへと展開していく予定である。
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Research Products
(3 results)