2015 Fiscal Year Annual Research Report
インドールの酸化的環化反応を鍵とするロイコノキシン類及びセクラミンAの全合成
Project/Area Number |
15J03530
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅原 厚志 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 分子内不斉溝呂木-Heck反応 / Boc2Oを用いる縮合反応 / ロイコノキシン / ラジニラム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、特別研究員は、ロイコノキシン類及び抗癌活性を有するラジニラムの網羅的不斉全合成研究に取り組んだ。研究開始当初、インドールの新規不斉酸化反応を様々な条件で検討したが、エナンチオ選択性が乏しかった。そこで、ロイコノキシン類及びラジニラムが有する不斉第四級炭素中心の構築に関して、分子内不斉溝呂木-Heck反応に着目した。すなわち、分子内不斉溝呂木-Heck反応により不斉第四級炭素中心の構築を行った後、ジアステレオ選択的なインドールの酸化反応を行うことで不斉合成が達成可能であると考え、様々な不斉配位子を用いた分子内不斉溝呂木-Heck反応を検討した。その結果、Ph-PHOXを不斉配位子として用いることで最大で58% eeの鏡像体過剰率で不斉四級炭素中心の骨格に成功した。このように、ヒドロピリド[1.2-a]インドールの9位における不斉四級炭素中心の構築法として、新たに見出した手法が有効であることを示した。今後はさらなる検討により鏡像体過剰率の向上を行い、ロイコノキシンをはじめとする様々なモノテルペンインドールアルカロイドの不斉全合成に応用されることが期待できる。 また、特別研究員は、ロイコノキシン類の全合成研究の過程で見出した、Boc2Oと有機アミン触媒を用いるインドールとカルボン酸の縮合反応の改良を行うことで、様々な低反応性アミン求核種とカルボン酸との新規縮合反応の開発を行った。本反応条件は金属強塩基の使用や不安定な酸塩化物あるいは混合酸無水物の要時調製が不必要であり、穏和な条件下、簡便な反応操作で反応が進行する。そのため有機合成的観点から有用と言える。また創薬研究の発展に寄与すると期待される。本結果は、今後学術誌に投稿する予定である。また、以上の結果に関して、国内で行われた3件の学会で口頭発表を行い、他の専門家と論議することで今後の研究に有益な情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドールの不斉酸化反応を鍵としたロイコノキシン類の不斉全合成を課題として取り上げ、インドールの不斉酸化反応の検討を行ったが、エナンチオ選択性の向上は予測以上に困難であった。しかし、新たに行った分子内不斉溝呂木-Heck反応の検討では、これまでに例のないヒドロピリド[1.2-a]インドールの9位における不斉四級炭素中心の構築を、鏡像体過剰率58%eeで目的物を得ることに成功した。さらなる検討を行い、エナンチオ選択性の向上を図ることができれば、今回見出した反応が、様々な生物活性天然物の不斉全合成において、強力な手法となると期待できる。 さらに、全合成研究の過程で見出した知見を基に、Boc2Oと有機アミン触媒を用いたインドールとカルボン酸との新規縮合反応を開発した。新たに見出した縮合反応では、ピロール、カルバゾール、ピラゾール、ラクタムやアニリドといった広範にわたる低反応性求核剤の適用が可能であったことから有機合成的に有用性が高く、創薬研究の発展にも大きく寄与するものであると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ロイコノキシン類及びラジニラムの網羅的不斉全合成を達成するため、上記で述べた分子内不斉溝呂木-Heck反応の検討を、より詳細に行う。例えば様々な不斉配位子、特にPHOX系や必要に応じて新規の不斉配位子の設計、合成を行い、それらを用いた検討を行う。また、遷移金属種としてパラジウム以外にもニッケルや銅を用いた反応条件の検討も行う予定である。これらの検討により、高いエナンチオ選択性で不斉四級炭素中心の構築に成功した後は、ジアステレオ選択的なインドールの酸化反応を検討する。その後、ロイコノキシン類及びラジニラムの不斉全合成を達成する予定である。 また、Boc2Oと有機アミン触媒を用いた様々な低反応性求核剤とカルボン酸との新規縮合反応に関しては、今後学術誌に投稿する予定である。 さらに、上記の検討で得た結果を、国内外の学会で発表を行い、他の専門家と論議を行うことで今後のさらなる研究の発展に必要な情報を収集する予定である。
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Research Products
(3 results)