2015 Fiscal Year Annual Research Report
三重項-三重項消滅による近赤外光から可視光へのアップコンバージョン分子システム
Project/Area Number |
15J03549
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
雨森 翔悟 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アップコンバージョン / 近赤外光 / 三重項 / 三重項-三重項消滅 / 有機金属錯体 / 自己集合 / 太陽電池 / 光線力学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、三重項-三重項消滅を利用したフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)は、太陽光程度の低強度の光を励起光として利用可能であるため、太陽電池や光線力学療法等への応用に向けて盛んに研究が行われている。しかしながらこれまでにTTA-UCの励起光として用いられている光は可視域の光がほとんどであり、応用上重要となる近赤外光を励起光として用いた例は僅かである。そこで本研究ではTTA-UCの適用波長域の長波長化とその高効率化を目的とする。近赤外光をTTA-UCするために課題となるのが、ドナー分子(三重項増感剤)の開発である。近赤外光をTTA-UCするドナー分子の条件として近赤外光の吸収と高い三重項エネルギー準位、高い項間交差効率が求められる。しかしながら項間交差の際にエネルギーの損失があるため、一般的に上記の条件を満たすことは困難である。本研究では上記条件を満たすドナー分子を探索するために、これまでドナー分子としての利用の報告例のないメタロナフタロシアニン誘導体とオスミウム錯体を用いた結果、共に850nmを超える近赤外光のTTA-UCに成功した。特にオスミウム錯体を用いた系ではTTA-UCの量子収率が1.5%と世界最高水準の値が得られた。本研究により近赤外光をTTA-UCするためのドナー分子の母骨格として、メタロナフタロシアニン誘導体とオスミウム錯体が有用であることを示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究の目的である三重項-三重項消滅を利用した近赤外光から可視光へのアップコンバージョンを行う上で課題となるドナー分子の探索を行った。結果として、オスミウム錯体を用いることで大きなアンチストークスシフト(938nmから570nm)と高いUC量子収率を達成した。得られた量子収率(1.5%)はこれまでに近赤外光のTTA-UCで報告されている最高値(1.1%)よりも高い値である。また有機金属錯体を用いた900nmを超えるTTA-UCは本系が初めてである。これらの結果は予想以上の結果であり、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
オスミウム錯体を用いることで、大きなアンチストークスシフトと高いUC量子収率が達成された。しかしながら、最大の量子収率を達成するために必要な励起光強度の値(Ith)が以前大きく(10W/cm2)、その低強度化が求められる。今後はアクセプター分子の自己集積化により三重項拡散速度を向上させることで、Ithの低強度化を目指す。
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Research Products
(5 results)