2015 Fiscal Year Annual Research Report
家族性骨髄異形成症候群の原因遺伝子およびその分子機構の解明
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15J03679
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
髙岡 賢輔 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 家族性骨髄異形成症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
1家系に4名の骨髄異形成症候群(MDS)を認める家系を用い、同家系内の2名の患者および2名の健常者の検体にて全エクソンシークエンスを施行し、16889の生殖細胞のミスセンス変異を同定した。1000ゲノム計画で知られているSNP等、既報のSNPおよびin-house SNPを除外した後、サンガーシークエンス法でバリデーションを行った。最終的に12の生殖細胞の候補遺伝子を同定した。12の候補遺伝子の中に孤発性MDS、家族性MDSのドライバー遺伝子として報告されている遺伝子を認めなかった。家族性MDSのさらなる検体を集めるため家族性MDSに関する全国調査を実施(本学倫理申請承認済)し、2016年2月現在9名の新たな家族性MDSの臨床検体を得たが、同検体に上記12の生殖細胞の候補遺伝子は同定されなかった。候補遺伝子の中で文献的に孤発性MDSのドライバー遺伝子と同様の働きを持つ遺伝子Xより機能解析を進めた。最初にshRNAの系を用いてXをノックダウンしたマウス骨髄細胞のコロニーフォーミングアッセイを施行し半固形培地におけるコロニー継代数が延長することが判明した。次に、半固形培地1系代目後のコロニー細胞について造血幹細胞/前駆細胞の表面マーカーであるc-kit陽性細胞を測定した。Xノックダウンにてc-kit陽性細胞の割合が増加することが判明した。40例の孤発性MDS骨髄検体においてXの全コーディング領域をサンガ-法にてシークエンスした。1例(2.5%)に新規の変異を同定し、Xの変異は孤発性MDSにも存在し得ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は全エクソンシークエンス後、抽出した約16889の生殖細胞のミスセンス変異からサンガーシークエンスを用いてバリデーション後、家族性骨髄異形成症候群(家族性MDS)の原因遺伝子として最終的に12の候補遺伝子に絞り込んだ。そのうち、RNAi法により候補遺伝子Xをノックダウンしたマウス骨髄細胞を用いコロニーアッセイを施行し、半固形培地においてXノックダウン細胞ではコントロールに比べコロニー継代数が延長することを示した。またXノックダウンにて、1継代目後のコロニー形成細胞中のc-kit陽性細胞の割合が増加することを明らかにした。野生型タンパク質Xは既報よりATPアーゼ活性を有することが知られていた。そこでタンパク質X変異体のATPアーゼ活性を測定したが野生型タンパク質の有するATPアーゼ活性と有意差を認めなかった。さらに40例の孤発性MDS骨髄検体においてXの全コーディング領域をサンガーシークエンスした。1例(2.5%)にXの新規の変異を同定し、X変異は孤発性MDSにも存在し得ることを明らかにした。現在in vitroの系にてX変異体を用いた機能解析を施行中である。また、c-kit陽性マウス骨髄細胞においてRNAi法によりxをノックダウン後、骨髄細胞を致死量放射線を照射したマウスに移植しマウス骨髄移植モデルを樹立した。現在血液データなどを採取中である。これらの研究成果は、初年度で候補遺伝子の絞り込み、in vitroでの機能解析、および生体内においてin vitroの培養系と同様の実験を行うための移植実験を施行、という当初の予定に沿ったものであり、期待通りの研究が進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
家族性骨髄異形成症候群(家族性MDS)に関する全国調査により、新たな家族性MDSの臨床検体を得る予定がある。得られた検体についてこれまでに明らかになった12の候補遺伝子変異の有無をサンガーシークエンスを用いて解析する。Xのin vitroでの機能解析を継続する。野生型タンパク質Xは既報よりタンパク質Yをポリユビキチン化することが知られている。タンパク質X変異体のタンパク質Yに対するポリユビキチン化能の有無をHEK293T細胞に野生型タンパク質Xおよびその変異体を過剰発現することによりウエスタンブロット法を用いて解析する。次に細胞株に野生型タンパク質Xおよびその変異体を過剰発現させ、両者の増殖能、アポトーシス、DNA傷害等を比較する。またタンパク質Xとタンパク質Zの相互作用が次第に明らかになってきた。細胞株に野生型タンパク質Xおよびその変異体を過剰発現させZとの相互作用の差を解析する。XをshRNAの系を用いてノックダウンしたマウスc-kit陽性細胞を、致死量の放射線を照射したマウスに移植した。移植マウス数を増やし血液検査、骨髄および末梢血におけるキメリズム、血球の異形成等の表現型を継続して観察する。上記実験により有意な結果を認めればXは家族性MDSを定義する新たなバイオマーカーとなり、同時に腫瘍発症の責任体細胞変異は同疾患単位における腫瘍発症の早期マーカーとなる可能性がある。家族性および孤発性MDS臨床検体を用いその有用性について検討する。本研究により同定された遺伝子異常は治療標的となる可能性がある。同定された遺伝子がコードする蛋白質の阻害剤が報告されている場合はその阻害剤の有効性を検討する。報告されていない場合はその標的遺伝子の下流に位置する蛋白質を同定し、今後の治療標的になり得るか検討する。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Investigation of a causal gene of familial myelodysplastic syndromes2015
Author(s)
Takaoka K, Kawazu M, Yoshimi A, Kobayashi T, Nannya Y, Ueno H, Suzuki K, Harada H, Manabe A, Hayashi Y, Mano H, and Kurokawa M
Organizer
第77回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
ホテル金沢(石川県金沢市)
Year and Date
2015-10-16 – 2015-10-18
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