2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J03760
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中原 由揮 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 植物 / アクアポリン / 二酸化炭素 / 植物生理学 / 分子生物学 / 酵母 / 酵母スクリーニング系 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化炭素(CO2)は、植物の基本的な代謝である呼吸と光合成において重要な役割を果たす物質である。近年、主要作物であるイネにおいて、植物体内外のCO2濃度と光合成活性は強い相関を有することが明らかにされた。しかし、イネにおける生体膜を介したCO2輸送のメカニズムは解明されておらず、CO2輸送体も未同定である。 本研究では、これまでにCO2を輸送することが報告されているアクアポリンというタンパク質に着目し、イネの持つ34種類のアクアポリンの中からCO2輸送活性を持つものを特定すること、及びその輸送機構を解明することを目的としている。この取り組みによって得られる成果は、生物学的な価値に止まらず、高バイオマス作物の開発につながる可能性もある。初年度に当たる本年度は、酵母を用いた簡便なCO2輸送体スクリーニング法の開発に取り組む計画であった。 開発に取り組んでいるCO2輸送体のスクリーニング法は、炭酸脱水素酵素-EGFP融合タンパク質を恒常的に発現する出芽酵母株(CA株)にCO2輸送体を共発現させることで生じる生育阻害を指標とした、新規の輸送体同定法である。既にCO2を輸送する事が知られているアクアポリンAtPIP1;2及びHvPIP2;5をCA株に発現させることで、顕著に生育阻害が生じることを明らかにしている。本年度の取り組みとして、当研究室の所有している様々な植物のアクアポリン全69種をCA株に発現させて生育を確認したところ、18個のアクアポリンがCA株に生育阻害を引き起こすことを明らかにした。これらのアクアポリンは、CO2の輸送活性を有することが推測される。また、これらのアクアポリンの酵母内での局在を調べたところ、何らかのオルガネラ膜上に局在することは確認できたが、そのオルガネラ内にCO2が貯蔵されていることは確認できていない。そのため、当初予定していた論文執筆には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、開発中の酵母を用いたCO2輸送体スクリーニング法を用いて、イネを含む複数種の植物アクアポリンから、18個のCO2輸送活性を持つ可能性のあるアクアポリンを特定した。しかし、酵母を用いたCO2輸送体スクリーニング法は未だ完成しておらず、これらのアクアポリンが本当にCO2を輸送しているのかは不明確である。その原因は、それらアクアポリンの酵母内での局在部位が想定していたものと異なっていることに起因しており、未だ局在部位の特定には至っていない。酵母の研究を専門に扱っている研究者が集うワークショップにて研究成果の発表を行い、専門家に局在場所やオルガネラについての意見を聞いたが、専門家からも明確な回答を得ることができなかった。そのため、酵母を用いたCO2輸送体スクリーニング法は、酵母のみを用いて直接的に立証することは困難と考え、間接的にそれらのアクアポリンがCO2を輸送していることを証明する実験も同時に進めることにした。現在、新たにCO2を輸送する可能性が示唆されたアクアポリンがCO2の輸送活性を持つことを、アフリカツメガエルの卵母細胞を用いた従来の活性測定法とイネ植物体にて発現量を調節した形質転換体を用いて検証する実験を進めている。 また、アクアポリンのCO2輸送活性メカニズムを明らかにするため、水輸送活性に重要なアミノ酸を置換したアクアポリンを作成し、水輸送のメカニズムとの比較実験も現在進めており、この研究に関しては、当初の予定よりも進行している。 達成度区分の評価は、研究の進展はあったが論文の投稿には至らなかったという点から、客観的に判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究によって、スクリーニング法を直接的な手法のみで確立証明させることは困難であると判明した。そのため今後は、1)アフリカツメガエルの卵母細胞を用いてアクアポリンのCO2輸送活性を直接測定し、2)候補アクアポリン形質転換植物体の光合成活性を測定する。これらの実験により、アクアポリンがCO2輸送活性を示すことを実証する。実証された結果とこれまでに得られてきたデータを合わせることで、酵母を用いたスクリーニング系を確立し、アクアポリンのCO2透過性を上記3通りの手法で決定する。そのため現在、CO2輸送活性を示す可能性のあるイネアクアポリンをいくつか選出しており、それらアクアポリンのイネにおける局在部位の特定及びアクアポリンミュータントイネの光合成活性の測定を開始している。 また、アクアポリンのCO2透過性の分子メカニズムを生理学的に調べるため、水輸送活性に重要なアミノ酸を置換したものを作成した。今後は、これらの基質の輸送活性を調べることで、水とCO2の輸送機構の違いやCO2を選択的に透過させるために重要なアミノ酸部位の特定を目指す。 それぞれの研究について論文を執筆し、国際誌に投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)