2015 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける民主化と法の支配:体制変動期の司法の裁定に関する政治学的分析
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15J03801
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
外山 文子 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 高級官僚用高等教育機関 / 判事の経歴 / 司法制度改革 / 司法の政治化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の調査ポイントは、司法や独立機関の制度面での変化についてであった。一般公開されている書類等の他、国家汚職防止取締委員会と選挙委員会を直接に訪れて、知り合いの職員から記念本などの資料も集めることができた。また憲法裁判所については、事務局長と判事のアシスタントの2名と知り合う機会があり、彼らから様々な資料を入手できそうな状態にある。また文献調査については、膨大な憲法起草資料は入手済みであり、現在チェック中である。 調査の中で当初予想していない結果も出てきたため、若干軌道修正を行う必要が登場した。当初は1970年代が重要な鍵を握っていると思われたが、実際に調査を行ってみると1990年代以降の司法制度改革がより重要であることが明らかとなってきた。また、憲法裁判所の判事や各種独立機関の委員のプロフィールを調査したところ、最高裁判所判事出身者と並んで、多数の各省庁出身の文官が判事や委員に含まれていることが明らかとなった。また、軍や警察出身者も多数見られたため、彼らの多くが職種を超えて一緒に学んだ経験のある「高級官僚用の高等教育機関」の重要性が浮かび上がってきた。同機関に関心を持つ院生とも知り合いになったため、2年目は官僚教育のカリキュラムについて資料収集を行い、司法の政治化にどのような影響を及ぼしていたか調査を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、研究計画どおりタイのタムマサート大学政治学部での在外研究を開始した。1年目は、タイの司法制度について、過去40年間の変遷を確認することとなっている。申請者は、計画に従って文献及びインタビューによる調査を試みた。しかし現在のタイでは、軍事政権による強権的な支配が続いており、研究者の活動や発言も厳しく監視されている。また、裁判所判事や独立機関委員も研究者やマスコミを強く警戒しており、申請者は人脈を拡大するに当たりかなり試行錯誤した。しかし粘り強くネットワークを拡大し続け、独立機関の委員や職員、憲法起草委員にインタビューを行うところまで漕ぎ着けた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目に構築した人脈を利用して、独立機関委員や判事、憲法起草関係者にインタビューを行い、更に、1年目に分かった、高級官僚用の教育機関でのインタビューを行う予定である。
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Research Products
(6 results)