2015 Fiscal Year Annual Research Report
時空間的文脈を利用した効率的な知覚構築のメカニズムの解明
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15J03815
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 沙永 東北大学, 電気通信研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 同時対比 / 文脈効果 / 空間周波数 / 傾き対比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、自身の以前の研究(Kaneko & Murakami (2011))を軸として明るさ・色以外の同時対比の時空間特性を調べることを中心とした。前半は主に空間周波数知覚に関する空間錯視2つの相互作用を調べた研究を行った。同時対比は空間周波数次元でも起こり、同一の正弦波縞でも周辺縞が細いと太く、太いと細く見えることが知られている(Klein et al., 1974:以下、錯視1)。また、関連した錯視として正弦波縞が高速で位相反転すると実際よりも細く見えるという現象も知られている(Virsu et al., 1974等:以下、錯視2)。しかしこれらの現象の発生メカニズムについては研究が進んでいない。本研究ではこの2つの現象を組み合わせることで、視覚情報処理過程の中での両現象発生メカニズムの相対的順序を明らかにすることを目的とした。実験の結果は、錯視2がまず発生し、その後錯視1が生じるという相対的な処理順序であることを示唆するものであった。 後半はKaneko & Murakami (2011)で得られた明るさ色同時対比の時間特性が他の同時対比効果にも共通して見られることを傾き対比、色相対比効果を用いた研究で示した。傾き対比とは刺激の傾きが周囲の傾きの反対方向に偏って見える現象のことを指す。先行研究は刺激呈示時間により傾き対比の効果が変わることを示しているが、その変化の有り様についての結果は一致していない(Wenderoth & Johnstone, 1988等)。本研究では傾き対比に対する呈示時間の効果、周辺刺激・テスト刺激間の傾き差の効果について検討した。実験結果は、呈示時間が短い条件での傾き対比錯視量が、傾き差によらず呈示時間が長い条件での錯視量の2.5倍になることを示した。また色相対比効果でも同様に呈示時間が錯視量に強い影響を与えることが実験において示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期間前半に行った空間周波数知覚に関する研究内容は8月に行われたEuropean Conference on Visual Perceptionにおいて発表を行った(ポスター発表)。また後半に行った傾き対比および色相対比の実験結果に関しては1月の日本視覚学会において発表を行い(口頭発表)、5月にはVision Sciences Society annual meetingでポスター発表を行う予定となっている(発表確定)。これらの学会発表において、国内外の研究者と交流を持ち、彼らからの有意義な意見を得ることが出来たことが成果としてある。これらの研究内容の論文は現在投稿準備中となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の論文に関しては年度初頭での投稿掲載を目指す。昨年度予備的に行ったMRIを用いた実験では使用機材の特性の違いによる予想外の見えの違い、刺激パラメータの設定の難しさなどの問題が明らかになり、決定的なデータは未だ得られていない。今後は実験デザインの根本的な見直しや時間解像度により優れたMEGなどの別技術を取り入れるなどの改善を検討する必要がある。心理物理実験では瞬間呈示と同時対比の錯覚効果の関連性の普遍性を示唆する結果が得られたため、これを足がかりに対象錯視現象を広げて研究を行う予定である。
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Research Products
(6 results)