2015 Fiscal Year Annual Research Report
「ヨコへの発達」概念の生成と展開－近江学園・びわこ学園における重症児の発達保障－
| Project/Area Number |
15J03881
|
|---|
| Research Institution | Kobe University |
|---|
Principal Investigator |
垂髪 あかり 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
| Keywords | 「ヨコへの発達」 / 半世紀にわたるびわこ学園施設実践史の解明 / 近江学園・びわこ学園の中心人物の思想史解明 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
重症心身障害児を「不治永患」とみなした従来の限定的な「発達」観を超えて，生活の豊かさや生き甲斐，内面の広がり等を実践的に創出・究明することを意味する「ヨコへの発達」概念の生成と展開過程の解明を研究目的に，３つの研究を実施した。
（研究１）では，近江学園の中心人物である糸賀一雄，岡崎英彦，田中昌人，髙谷清に関する公刊及び未公刊の著作物と先行研究等を収集・分析し，「ヨコへの発達」や「重症心身障害児の『発達保障』」に関連する思想史を解明した。これまでの先行研究では，それぞれの人物の思想が単独で分析される傾向にあったことを踏まえて，本研究では「ヨコへの発達」概念の創出プロセスにおける糸賀，岡崎，田中の「関係性」に着目して分析を行い，その成果を『人間発達研究所紀要』第28号に発表した。髙谷についても，糸賀等の思想をどのように発展・継承させているかといった視点から分析・考察を行い，その成果を『人間発達研究所紀要』第29号に投稿し，受理された。（研究２）では，近江学園「杉の子」組（1953年～）の実践から創設期の「びわこ学園」（1963年創設），とりわけ特に障害の重い子どもたちで編成された「第一びわこ学園」（1963年～）の50余年にわたる施設実践史を，『近江学園年報』，びわこ学園『年度報告』，『びわこ学園年報』，びわこ学園『記念誌』「びわこ学園だより」「病棟総括集」などの史資料を分析することによって解明した。「第一びわこ学園」に関しては，これまで限られた期間についての先行研究しかなかったことを踏まえて，本研究で初めて創設から現在に至までの50余年の実践史を解明したことに大きな意義がある。その成果は『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』第10巻第１号に投稿した。（研究３）では，1960年代～現在に至るまでの間にびわこ学園在園した４事例の各担当職員へのインタビュー調査を実施した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に計画した３つの研究（研究１）「史資料（人物）の収集・分析，指導記録への調査，インタビュー調査」（研究２）「史資料（施設史）の収集・分析，公開シンポジウム」（研究３）「個別事例の選定，びわこ学園との調整，個別事例史の収集，分析」について、概ね順調に進展している。
（研究１）「史資料（人物）の収集・分析」及び「インタビュー調査」は計画通り実施することができた。計画していた「指導記録への調査」については，近江学園を訪問し，書類を提出の上，研究協力依頼を申請したが，個人情報保護の観点から過去の指導記録への調査については許可されず，実施することができなかった。一方，びわこ学園については，書類を提出の上，研究協力依頼を申請したところ，個人名を伏せて閲覧のみ許可されたため，複写等は一切とらず，参考程度に閲覧させてもらうことができた。こうした経緯から，「指導記録への調査」については思想史，施設実践史を分析する上での参考程度として位置づけることにし，それ自体を研究材料にすることは断念することにした。
（研究２）「史資料（施設史）の収集・分析，公開シンポジウム」は計画通り実施することができた。
（研究３）「個別事例の選定，びわこ学園との調整，個別事例史の収集，分析」については「個別事例の選定，びわこ学園との調整，個別事例史の収集」まで計画通り実施することができた。現在，「個別事例の分析」の作業を進行中である。
以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
年度当初に立案した計画に添って，今後も研究を推進していく。具体的には，今年度前期に（研究３）「個別事例の収集・分析」のうち，「分析」の作業を実施し，結果の発表・投稿を行う。それを踏まえて，今年度後期には，これまで実施してきた（研究１）思想史（研究２）施設実践史（研究３）個別事例史を総合的に検討・考察し，博士論文の執筆へと繋げていく。
さらに，今年度終盤には，博士論文の執筆を通して，その後の研究計画を立案していきたい。
|
Research Products
(5 results)
