2015 Fiscal Year Annual Research Report
局在光を用いたナノポア近傍におけるDNAの動的立体構造解析法の開発
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15J04005
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山崎 洋人 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ナノポア / 近接場光 / DNAダイナミクス / 蛍光 / 紫外光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナノポア近傍におけるDNA動的立体構造の理解に向けて、DNA動的立体構造観察法の構築を行った。まず、電磁場解析、ドリフト・拡散方程式、DNAサイズ(回転半径)の方程式から、それぞれ局在光の大きさ、ナノポア通過後のDNA空間移動、ナノポア通過直後のDNAサイズを見積もり、実験結果との比較を行った。その結果、蛍光強度波形の立ち上がり・減衰は、それぞれナノポア通過過程・通過後過程に対応すると結論付けることができた。この知見をもとに、実験条件に依存した蛍光強度波形からナノポア近傍におけるDNA動的立体構造について議論した。本年度は、励起光の偏光依存性、DNA長依存性、膜特性依存性に着目して実験を行った。励起光の偏光依存性に関する実験結果から、バルク溶媒中の二本鎖DNAサイズの方程式から概算されるように、電場勾配環境下においても、長さ10 kbpの二本鎖DNAサイズは、局在光の大きさと比べて大きいことがわかった。また、DNA長依存性では、DNA長が長いほど局在光に滞在する時間の長い蛍光強度波形が得られた。静電駆動力の理論計算から、この実験結果は、DNA長が長いほど、ナノポア通過後の遅いDNA電気泳動速度を示すことがわかった。膜特性依存性では、空孔率が高い膜ほど、時間幅の長い蛍光強度波形が得られた。DNAナノポア通過の理論から考えると、この結果は、高い空孔率によるナノポア内部の静電場強度の減少に加えて、周囲のナノポアからDNAが受ける複雑な電気的駆動力や流体力学的相互作用によるDNAナノポア通過速度の低下として説明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局在光の大きさ、ナノポア通過後のDNA空間移動、ナノポア通過直後のDNAサイズを見積もりから、蛍光強度波形をナノポア通過過程からナノポア通過後過程におけるDNA挙動として説明できた。これにより、従来のイオン電流型検出では得られないナノポア通過後過程のDNA動的立体構造について議論できるようになった。とりわけ、ナノポア通過後過程の電気泳動移動速度のDNA長依存性やナノポア通過速度の膜特性依存性について示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
詳細なナノポア近傍におけるDNA動的立体構造解析を行うために、次年度の研究では、単一ナノポアを用いてDNAナノポア通過現象の観察を行う予定である。また、ナノポア通過過程と通過後過程に関して詳細な議論が見込めることから、イオン電流測定を本研究法への導入の検討が必要である。
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Research Products
(9 results)