2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J04049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仲 修平 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 社会階層 / 社会移動 / 自営業 / 失業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,失業経験者の職業移動を明らかにすることである.2015年度(平成27年度)の主な研究実施状況は,学術論文(1本),学会/シンポジウム等(3本)の成果を挙げたことである.以下,それぞれの研究状況を報告する. 第1に,“The Origin of Sociology of Occupation and the Historical Development of Social Stratification and Mobility Research in Japan”は,日本社会学会による公募特集「日本社会学70年」の査読付き書評論文である.論文の目的は尾高邦雄『職業社会学』(1941年)の起源を踏まえて社会階層研究への展開を明らかにすることであった. 第2に,「自営業の内部における地位の分化―SSM調査を用いた予備的分析」は社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)の1995年と2005年データを用いて,自営業者の職業内容の変化を明らかにすることを試みた. 第3に,「現代日本における自営業の異質性―JGSSデータを用いた職業と収入の関連についての分析」は日本版General Social Surveys(JGSS)の2000年から2010年までのデータを用いて,自営業の内部の異質性を明らかにすることを試みている.とりわけ,異質性としての職業に着目し,各職業(専門・販売・熟練・非熟練)と収入の関連を検討した.この研究は2016年5月の関西社会学会で報告予定である. 第4に,“Changes in Unemployment Rates and Entry into Self-employment in Japan, Korea and Taiwan”,SSM調査の日本・韓国・台湾の職業経歴データを用いて計量的な分析を行ったものである.TASA Conference (The Australian Sociological Association)の社会階層部会で報告を行った.以上が2015年度の主な研究実績である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は,査読付き学術論文の執筆,国際学会報告などを通して研究の進捗があったため,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.とくに,日本社会学会の英語版雑誌International Journal of Japanese Sociologyに投稿した尾高邦雄氏の職業社会学と日本の階層研究の歴史に関するレビュー論文は,PDにおける研究の基盤をなすものである.この研究成果を土台として,2年目以降の研究へ繋げることを考えている. また,研究機関が関西学院大学から東京大学社会科学研究所へ変わったことによって,自身の研究内容と研究方法を再検討することができている.とりわけ,研究所の助教やポスドク研究員の方々と毎月一度の研究会が重要な意味を持っている.その研究会では社会学,法学,経済学や財政学など様々なバックグラウンドをもつ研究者が集って研究報告と議論を行っている.2015年度は私自身も一度報告させていただき,多くの有益なコメントをもらっている.これらの状況を踏まえると,研究は順調に進んでいると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目は計量分析のスキルアップを行うこと,1年目後半の研究成果を国際学会で報告すること,1年目に行った社会階層と社会移動に関する全国調査データの分析を行うことを予定している.以下,それぞれについて具体的な推進報告を述べる. 第1の計量分析のスキルアップは,ドイツのGESISで開催されている5th Summer School in Survey Methodologyヘの参加を通じて(2016年8月22~26日),数学の素養と計量分析を体系的に習得する.このセミナーは世界中からポスドク研究員を中心として若手研究者が集まるため,共通の分析手法の習得を経るなかで研究交流を積極的に行いたい. 第2の国際学会での報告は,9月にカンボジアで開催されるAPSA(Asia Pacific Sociological Association)へのエントリーを予定している.研究内容は,失業者の受け皿と考えられてきた日本の自営業層が歴史的にどのような変化を遂げてきたのかを分析した結果の一部である. 第3の全国調査データの分析は,「2015年社会階層と社会移動全国調査」(SSM調査)である.このデータは2015年度に調査を実施し,昨年8月から今年の3月までデータのクリーニングを進めてきた.データの一次配布が2016年4月に行われたため,分析可能になっている.現在は具体的な分析の枠組みを検討している.
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Research Products
(4 results)