2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトから分離された高病原性コウモリ由来レオウイルスの細胞侵入機構の解明
Project/Area Number |
15J04209
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川岸 崇裕 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | レオウイルス / 新興感染症 / 細胞侵入 / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、急性呼吸器症状を呈した患者から分離されたコウモリレオウイルス(PRV)の感染受容体を同定し、PRVの感染、病原性発現機序を明らかにすることである。我々はこれまでにPRVの侵入・吸着過程には構造蛋白質σCに依存する経路と他の構造タンパク質(σB/μB)に依存する経路が存在することを示唆する結果を得ている。今年度は以下の研究成果が得られた。
1)培養細胞における野生株およびσC-nullの感染性を比較解析した。その結果、BHK細胞、CHO-K1細胞、DemKT1細胞、Vero細胞ではσC-nullは野生株と同程度に感染し、これらの細胞においてはσB/μBが細胞侵入に関与していることが示唆された。一方、A549細胞ではσC-nullの感染性は顕著に低下していたことから、σC依存的感染経路の重要性が示唆された。 2)培養細胞におけるσCタンパク質の細胞表面への結合能を解析した。σC依存的な感染が認められたA549細胞において、σCが細胞表面に直接結合しているかを確認するため、Cell surface binding assayを確立した。その結果、σCがA549細胞表面に直接結合できることを明らかにした。同様の方法で、σC-null 感受性細胞である培養細胞(BHK、CHO-K1、DemKT1、L929、Vero細胞)においてもσCタンパク質の結合能を解析した結果、これらの細胞では結合は認められなかった。 3)in vivoにおけるσCの意義を解析するため、マウス感染モデルを用いて野生株とσC-nullの病原性を比較した。その結果、σC-nullの病原性は顕著に低下していることが明らかとなった。これらの結果は、in vitroにおいて感染に必ずしも必要ではないσCがin vivoではPRV病態発現に重要な因子であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、σCの培養細胞への結合能の評価法を確立し、σCが直接A549細胞に結合することを示した。これらの評価系技術は、組換えタンパク質を用いたアフィニティー精製によりσC感染受容体を同定する上で重要な成果である。また、マウス感染モデルを用いて野生株およびσC欠損ウイルス(σC-null)の病原性を比較解析し、σCがin vivoでは病態発現に重要な因子であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き、PRV感染受容体の同定を試みる。今年度、確立に成功した培養細胞への結合能の評価法を用いて、以下の方法で同定を試みる。
1)組換えタンパク質を用いてアフィニティー精製によりσCと相互作用する細胞膜成分を回収する。その後MS解析により得られた候補因子のノックダウン/ノックアウト細胞株を樹立し、野生株の感染が抑制されるかを指標に目的の受容体が得られたかを判定する。 2)膜蛋白質を標的としたプール型shRNAライブラリーを発現するレンチウイルスにより膜蛋白質を網羅的にノックダウンした細胞株を作製する。樹立した細胞株を用いて、FACSにより組換えタンパク質との結合が認められない細胞集団を回収し、培養する。FACSによる選別と培養を繰り返すことで、σCとの結合が認められない細胞集団を増殖させた後、ノックダウンされている遺伝子を解析することで目的の受容体を同定する。
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Research Products
(3 results)