2015 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシアとインドネシアの社会的アカウンタビリティ・メカニズムに関する比較研究
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15J04417
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊賀 司 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 東南アジア / 社会的アカウンタビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は事前に立てた計画のとおり、アカウンタビリティの概念とそれに付随する理論の整理とともに、マレーシアやインドネシアに関する近年の政治状況の変遷や汚職対策機関に関する情報収集に努めた。 アカウンタビリティの概念やそれに関する理論的な整理については、4つのアカウンタビリティ概念(水平的アカウンタビリティ、選挙アカウンタビリティ、社会的アカウンタビリティ、国際アカウンタビリティ)の間の関係性に関する先行研究の収集・整理と読み込みを集中的に行った。また、それと関連して汚職とスキャンダルに関する研究の収集と読み込みも行った。その結果、汚職とスキャンダルの概念について、逸脱行為そのものを意味する汚職とそれが大衆に知らされることによって発生するスキャンダルは類似するが異なる概念であり、どのような形で汚職がスキャンダル化するかについて考えるうち、本研究に関わる重要な着想を得た。つまり、メディア、NGOや社会運動などの社会的アカウンタビリティの担い手が汚職のスキャンダル化をめぐる中心的アクターであり、しばしば水平的アカウンタビリティの担い手である司法機関や汚職対策機関の行動を大きく左右することがあることに気づき、その条件やタイミングについての考察を深めることができた。 マレーシアとの比較を目指して取り入れたインドネシアの政治とアカウンタビリティに関する情報収取では、10月にインドネシアを短期で訪れて、ジャーナリストや研究者との意見交換を行った。これを通じて平成28年度の調査に向けての下準備が一応整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マレーシアでは2015年に首相がマレーシア反汚職委員会や法務長官などの水平的アカウンタビリティを行使する機関の長や職員を次々と入れ替え、市民社会組織の活動家やメディアへの統制を強化する方向に動くことになった。この2015年の動向は、これまでマレーシアで1990年代末から進んできた民主化への移行過程を大きく反転させ、再権威主義化とも言うべき過程にマレーシアが突入していることを意味する。本研究が対象とするアカウンタビリティの制度やアクターも(それを損なう方向に)大きな影響を受けた。 しかし、そうした環境の激変下においてもマレーシアの市民社会組織がどのような形で社会的アカウンタビリティを発揮しようとしているのか、あるいはそうした市民社会組織の活動に汚職対策機関がどのように対応しようとしているのかをじっくりと観察する中で、当初の予想以上にマレーシアにおける社会的アカウンタビリティについての考察を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、当初の予定通り、2年目のフィールドワークで対象者に対するインタビューに注力する。それとともに、現在マレーシアで進行中の1MDBスキャダルについて、汚職対策機関および、市民社会組織の対応をフォローしていくことを目指したい。
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Research Products
(5 results)