2015 Fiscal Year Annual Research Report
顕微内視鏡を用いた音声情報抽出の神経メカニズムの解明:コウモリをモデルとした研究
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15J04434
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
八代 英敬 同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | Calcium imaging / inferior colliculus / local field potential / big brown bat / short-tailed fruit bat |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はコウモリの神経計算機構の解明である。当該年度では1コウモリでの光学計測方法の確立、2コウモリ下丘内でのパルス・エコー検出部位での聴覚応答の計測、これらを目指し、コウモリを被験体としてカルシウム感受性蛍光色素を使った光学計測を行った。実験はブラウン大学にてBig brown bat (Eptesicus fuscus)とShort-tailed fruit bat (Carollia perspicillata)の2種類のコウモリを使用して行った。これら2種類のコウモリを被験体としてカルシウムイメージングを行い、下丘での音刺激に対する蛍光変化を計測した。結果、コウモリでも同様に音刺激に対する聴覚応答の蛍光変化を記録することが出来た。 物体探索をする際に被験体のコウモリの発する超音波パルスの間隔は30 ms未満が多い。一方、顕微内視鏡の時間分解能は1フレームおよそ50 msであり、コウモリのパルス・エコーの情報処理を解明する為には、それよりもはやい速度でのサンプリングが不可欠であった。そこで、画像取得時の走査幅を変化させて同一ライン上のみをスキャンすることで時間分解能を向上させようと試みた。その結果、時間分解能を400倍に上げることが出来た。今後、このスキャン方法と通常のスキャンを組み合わせることが神経ネットワークの解明につながると期待している。 また、コウモリの擬似パルス・エコー音に対する聴覚応答の記録を行った。音刺激はパルス音のみ、パルス音・エコー音の組み合わせ、そしてパルス音・5個のエコー音の組み合わせの3パターンを使用した。エコー数が増えるにつれて⊿F/Fのピーク値も増えていたが、パルス・エコーの組み合わせに特有な変化は見られなかった。今後、擬似パルス・エコー音の周波数等を変化させてパルス・エコーの組み合わせ対する聴覚応答の記録を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標は1コウモリでの光学計測方法の確立、2コウモリ下丘内でのパルス・エコー検出部位での聴覚応答の計測の2つであったが、一つ目の目的は達成することが出来た。また、2つ目の目標は達成できなかったものの、擬似パルス・エコー音の組み合わせを音刺激にしても光学的な聴覚応答を記録することが出来た。また、光学計測の時間分解能を向上させる手法も確立させることが出来たため進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きコウモリを被験体とし、擬似パルス音および擬似エコー音を刺激音として聴覚応答の光学計測を行う。それらのニューロンと周辺の局所回路の光学計測を行い、聴覚応答の蛍光変化パターンを調べる。また、コウモリの実験と並行し、マウスを被験体として興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを区別しながら計測をするために2 色の蛍光を計測する。被験体には抑制性ニューロンに蛍光タンパクが発現している遺伝子改変マウスを被験体として用いる。聴覚応答は赤色のカルシウム感受性蛍光色素を使ってニューロン全体を染色し、2 色同時に計測することで抑制性ニューロンと興奮性ニューロンの区別をしながら聴覚応答の計測を行う。また、複数候補がある赤色のカルシウム感受性蛍光色素の中から本実験に適した色素の選定も行う。最終的にはコウモリでの興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを区別するためにレンチウイルスを使って蛍光タンパクをコウモリに発現させる。さらに、マウスの実験で選定した赤色のカルシウム感受性蛍光色素を使い、光学計測を行う。エコー音検出回路およびパルス・エコー音同時検出回路は興奮性と抑制性ニューロンの組み合わせによる回路を形成することでエコー・パルスの特定の時間差に応答するはずであり、ニューロンの種類を識別することでこれらの神経回路の発見を目指す。また、エコー検出ニューロンにはGABA 作動性ニューロン、パルス・エコー同時検出ニューロンにはグリシン作動性ニューロンの入力があると報告されている。そこで、ビククリン・ストリキニーネ等の抑制性ニューロンの機能を抑える薬品を使い、抑制性ニューロンがどのように働いているかを調べる。
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Research Products
(2 results)