2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Historical and Philosophical Study of Semantics of the Navya-nyaya School
Project/Area Number |
15J04441
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 陽一 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | インド哲学 / ニヤーヤ学派 / 意味論 / 言語哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、14世紀インドの思想家、ガンゲーシャの意味論を、思想史的および比較哲学的アプローチの両面から検討する。具体的には、(1)ガンゲーシャの『宝珠』における意味論を、古典論理学派の意味論と対比しつつ解読し、その成立に至る思想史を明らかにすること、(2)そうして解明されるガンゲーシャの意味論を哲学的見地から検討し、その特質と問題点を明らかにすることを目指す。 2016年度は、通年、ハワイ大学でアリンダム・チャクラバルティ教授と研究を行い、上記(2)の哲学的研究を集中的に進めた。研究の中心に置いたのは、『宝珠』の意味論の哲学的検討であり、言葉の「意味」とは何かという問題に関する、前年度から続けているヴィトゲンシュタイン意味論との対比的研究を継続した。その成果は、9月に日本印度学仏教学会の学術大会で発表し、また年度末に同学会の論文集において出版した。一方、論理学派の美的意味論(詩による美的体験の成立条件)についての研究を並行して進め、6月に米国の比較哲学の学会で成果を発表した。この問題については、その後も文献研究を続けており、最終年度の日本印度学仏教学会で発表予定である。 9月までの意味論研究において、意味論と宗教哲学の関係が大きな問題として浮上した。言葉と意味の関係を主宰神の創造によるとみなす新論理学派の意味論において、言葉の意味の学習は、神の意志を知ることに他ならない。認識能力において有限である人類が、いかにして神の無限の意志を知ることができるのか。これは、上述の美的意味論ともつながっており、新論理学派の哲学的意味論に通底する重要問題であるといえる。9月以降は、この問題を研究の中心に据えてきた。その一環として、ガンゲーシャに大きな影響を与えた形而上学者ヴァッラバの主宰神論証を解読し、3月にハワイ大学の国際ワークショップで発表した。ハワイ大での研究は3月下旬に終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね、計画通りに進行している。ハワイ大学での研究においては、意味論と宗教哲学の関係が表面化するなど、チャクラバルティ教授との共同研究の成果が大いに得られた。米国での研究発表も滞在中に2回でき、人的ネットワークも拡げることができたため、米国での研究はたいへん有意義なものとなった。一方で、研究のアウトプットははかばかしくない。既に論文にできる研究成果は得られているが、いまだ筆が追いついていない。しかし、最終年度に締め切りがある原稿をいくつももっているので、それらによって、これまでのアウトプットの遅れを挽回できるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、当初計画に掲げたタスクを完遂することを目標に研究を進める。まず、ハワイ大学での研究の成果を出版物としてまとめる。現時点で、①宗教哲学、②意味論、③意図論の三つについて英文記事を執筆する予定である。また、9月には美的意味論についての研究発表を予定しており、そのプロシーディングス原稿は年度内に出版される。これらに加え、時間が許せば意味論に関する比較哲学の論文を執筆し、国際的なジャーナルに投稿したいと考えているが、それよりも写本解読を優先しなければならないだろう。現在、まだ粗いトランスクリプトを作成しただけの状態にあるジャヤデーヴァ註およびガダーダラ註について、精度を高め、年度内にインターネットで公開する。 また、名古屋大学における和田教授のテキスト講読に参加し、新論理学の思想史研究に磨きをかける。ガンゲーシャの意味論の理解は、シャシャダラとヴァッラバのそれを精緻に理解することにより向上すると見込まれるので、和田教授の指導のもと、これらの文献に取り組みたい。その成果は、最終年度に執筆予定の原稿に反映させられるだろう。
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Research Products
(5 results)