2015 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品探索を指向した触媒的不斉C-Hカップリングの開発と応用
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15J04509
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
近藤 寛起 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 有機化学 / 炭素水素結合変換反応 / パラジウム / ヘテロ芳香環 / 軸不斉 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医薬品探索において「Escape from flatland」という化合物誘導化アプローチが注目されている。医薬分子にはビアリール骨格をもつ芳香族化合物が多く含まれる。一方で、その平面性や自由回転性のため生物活性や標的タンパク質への選択性の向上が困難である例が増加している。そのため、オルト位に置換基を有し平面構造をとれない三次元骨格をもつ嵩高いビアリール化合物が次世代医薬リード化合物として期待されている。また、嵩高いビアリール化合物は軸回転が制御されるため軸不斉が生じる。標的タンパク質は不斉情報を正確に認識するため、軸不斉ビアリール化合物はより副作用の少ない標的タンパク質選択的な医薬分子になる可能性を秘めている。 効率的なビアリール骨格構築法であるC-Hカップリングは官能基化を伴わず直接芳香環同士を繋げることが可能であるため世界中で精力的に研究されている。しかし、嵩高い芳香族化合物のC-Hカップリングを実現する分子触媒はほとんど報告されていない。これまでの研究によって、様々なヘテロ芳香環と嵩高いアリールボロン酸のC-Hカップリングを実現するPd(OAc)2/sulfoxide-oxazoline(sox配位子)触媒の開発に成功した。Pdに併せ用いる配位子が極めて重要であり、触媒の反応性を著しく向上させる。また、不斉点を有するsox配位子を用いることで報告例がほとんどない触媒的不斉C-Hカップリング反応へ応用し、軸不斉を発現させることに成功した。 本年度は不斉収率の向上を指向し、本反応の反応機構および不斉発現の機構解明研究に取り組んだ。不斉発現における配位子の置換基効果を実験化学により調査すると同時に、共同研究を行い、量子化学計算を用いて反応機構と不斉発現に関する配位子効果を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請者が見出したPd触媒を用いた不斉C-Hカップリングの反応機構と配位子効果を実験化学および計算化学を駆使して明らかにすることができた。そして、計算化学により得られた知見から、新たな配位子設計の指針を得ることが出来た。このことから、申請者の今年度の研究進歩状況は当初の計画以上に進展があったことは明らかである。
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Strategy for Future Research Activity |
不斉収率の向上を目指し、引き続きよりよい触媒の開発を行う。これと並行して、医薬品に最もよく含まれる芳香環であるベンゼン環に適用可能なC-Hカップリング反応の触媒開発を行う。不活性なベンゼン環を反応させるため、配位子検討が重要となる。はじめにヘテロ芳香環に対して有効であったスルホキシド-オキサゾリン配位子をもとに配位子のチューニングを綿密に行う予定である。
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Research Products
(2 results)