2016 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ自然集団における味覚感度の遺伝的多型を用いた糖受容機構の解析
Project/Area Number |
15J04525
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内園 駿 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 自然集団 / 味覚感度 / 遺伝的多型 / 糖受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究により、野外のショウジョウバエから確立された近交系系統(DGRP)におけるフルクトースの味覚感度の多型に糖受容体候補遺伝子のGr64a-Gr64f遺伝子ファミリーが関与していることがわかった。一方で、ショウジョウバエの脳内で栄養センサーとして働くフルクトース受容体Gr43a遺伝子の関与について調べるために、その欠失変異体とフルクトース低感度のDGRP系統とのF1のハエで味覚嗜好性テストを行った結果、Gr43aは私が調べたDGRP2系統のフルクトース感度の違いの原因遺伝子ではないことが示唆された。 そこで28年度にはまず、Gr43aが外部でのフルクトース受容に関わっているのかをGr43a欠失変異体とそのレスキュー系統を用いた味覚嗜好性テストで調べた。Gr43a欠失変異体のフルクトース感度はフルクトース低感度系統の感度と同程度で、レスキュー系統ではフルクトース高感度系統の感度と同程度であることがわかった。また、Gr43a遺伝子を脳内のGr43a発現細胞でのみレスキューした系統ではフルクトース感度がレスキューされず、Gr43a欠失系統のフルクトース感度とほぼ同じであったことから、末梢の味覚器で発現するGr43aもまたフルクトース感度に関与していることが示唆された。以上の結果と昨年度までの研究成果を合わせて論文にまとめ、英国学術誌Chemical Senses(2017年2月5日付オンライン速報版)に発表した。 また、昨年度に調べたGr64a、Gr64b、Gr64c、Gr64e、Gr64f遺伝子欠失系統のフルクトース感度に加え、Gr64d遺伝子欠失系統のフルクトース感度についても味覚嗜好性テストによって調べた。Gr64a-Gr64fのどの遺伝子が選んだDGRP2系統のフルクトース感度の違いに関与しているのかについて、29年度にも継続して調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画として、糖の味覚感度の多型に関わる遺伝子の探索を予定していた。現在までに、野外のショウジョウバエから確立されたDGRP系統のフルクトースの味覚感度の多型に糖受容体候補遺伝子のGr64a-Gr64f遺伝子ファミリーが関わっていることを明らかにできた。また、ショウジョウバエの脳内で栄養センサーとして働くフルクトース受容体Gr43a遺伝子(Miyamoto et al., 2012)についても末梢の味覚器でのフルクトース感度に関わっているが、私が調べているDGRPの2系統のフルクトース感度の違いには関与していないことを明らかにできた。これらの研究成果を当該年度中に国際学術誌に発表できたことに加え、翌年度に予定している「糖感度の多型の分子レベルでの解明」に向けた一部の実験を当該年度中に行うことができたことから、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「フルクトース感度の多型の分子レベルでの解明」を目標として、Gr64a-Gr64f遺伝子ファミリーのどの遺伝子がフルクトース受容体として機能しているのかを明らかにする。 現在Gr64a-Gr64fのいずれか1個の遺伝子を欠失した系統のフルクトース感度を味覚嗜好性テストと電気生理学的解析によって調べている。しかし、これまでに得られた実験結果から、Gr64a-Gr64fの1遺伝子の欠失系統ではフルクトース感度の低下が起こらないことがわかってきた。そこで、今後はGr64a-Gr64fの6個の遺伝子を全て欠失した系統に、Gr64a-Gr64fのいずれか1個あるいは複数の遺伝子を発現させることで、どの遺伝子がフルクトース感度に関わっているのか調べる予定である。 また、上記の実験結果と、フルクトース感度の異なる系統間でGr64a-Gr64f遺伝子の発現量を比較した結果とを合わせることで、Gr64a-Gr64f遺伝子ファミリーの発現量とフルクトース感度の多型の関係も明らかにできると考えている。 これらの研究成果についても今後論文にまとめ報告する予定である。
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