2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J04535
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
塩田 翔一 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | メタ認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
うつの発症機序の一つとして他者視点を用いたメタ認知とそれに関わる背内側前頭前野の異常が示唆される.うつになると自己に対するモニタリングが困難となるため,他者視点を用いたポジティブなメタ認知が低下し,抑うつ症状が悪化する.しかしながら,神経科学的観点からみたうつの他者視点を用いたメタ認知の異常については,未だ十分な検討がなされていない.また,うつの他者視点を用いたポジティブなメタ認知を改善させる介入法として,行動活性化が示唆的である.行動活性化によって行動と気分をモニタリングし評価することで,自己認知が変化することも報告されている.以上のことから,行動活性化によってメタ認知が向上し,抑うつが低減している可能性が考えられるが,この点を検討している先行研究は少ない.よって,本研究では神経科学的観点からみた行動活性化が閾値下うつの他者視点を用いたメタ認知とそれに関わる神経基盤へもたらす効果について検討した.介入群は統制群と比べて介入前後で抑うつ症状が有意に改善した.また他者視点を用いたポジティブなメタ的自己評価課題において,介入群は統制群と比べて背内側前頭前野脳活動が有意に増加し,介入前後で自己評価を行うまでの反応時間が有意に延びた.さらに介入前後でポジティブなメタ的自己評価課題の背内側前頭前野の脳活動が増加した者,ならびに自己評価を行うまでの反応時間が延びた者ほど抑うつ症状が改善した.これまでの検討から,背内側前頭前野はメタ認知に関わること,自己に対するメタ的自己評価を行う場合,判断するまでの反応時間が延長することが明らかにされており,これらの知見を合わせると,行動活性化の作用機序の一つとして,他者視点を用いたポジティブなメタ認知とその神経基盤を介した抑うつ症状の軽減が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は行動変容を目的とした行動活性化が,個人のメタ認知機能を改善することを実証した初めての研究であり,国際的にみても評価が高いPsychological Medicine (inpact factor, 5.5)に掲載された.また,同研究は日本うつ病学会第11回学会奨励賞医学分野を受賞し,メディカルレビュー社Depression Journalからの取材も受けている.さらに,一本目の研究における限界点を補完することを目的とした二本目の研究についても,すでに国際誌の査読を受けている. これらのことから,当初の計画以上に進展していると結論する.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目も2年目と同様に,大学の前期授業開始時に合わせて大規模スクリーニングを実施する.具体的には「共感に対し意図的に感情制御を課した際の苦痛度および脳活動の変化の検討」に関して,IRIを配布する.調査協力者は500名を予定.スクリーニングに並行して,実行機能と共感の関連に関する倫理申請を行い,許可が下り次第,協力意思のある方に連絡を取り,実験を開始する.研究3は,f-MRIを用いた実験であるため,実験協力者にかかる負担が大きく,実験の遂行に時間がかかり,また実験協力者も集まりにくいことが予想される.よって,必要に応じて,データ不足を補うためのスクリーニングおよび実験を行う.そして,2年目に執筆した論文の国内外における学会での発表や,学会誌への投稿を精力的に行う予定である.ついで,同趣旨の研究を行っている者と協力して,次年度の学会におけるワークショップの企画を立て,最終的にワークショップにおいて,育児放棄やSTSD,バーンアウト等の,共感によって生じる苦痛に関わる神経機構の異常を広く知らせ,日本における本領域の研究発展を図る.
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Effects of behavioural activation on the neural basis of other perspective self-referential processing in subthreshold depression: a functional magnetic resonance imaging study.2017
Author(s)
Shiota S, Okamoto Y, Okada G, Takagaki K, Takamura T, Mori A, Yokoyama S, Nishiyama Y, Jinnin R, Hashimoto R, Yamawaki S.
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Journal Title
Psychological Medicine
Volume: 47
Pages: 877-888
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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