2016 Fiscal Year Annual Research Report
現代アラブ君主制小国家群の体制維持メカニズムと脆弱性の動態的研究
Project/Area Number |
15J04563
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 駿 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アラブ君主制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代アラブ君主制諸国のうち、規模の小さな諸国家(以下、現代アラブ君主制小国家群とする)の体制維持メカニズムと脆弱性を、通時的な比較研究によって明らかにしようとするものである。この目的を達するため、昨年度までにヨルダン・ハーシム王国の体制維持メカニズムの解明を試みたほか、現代アラブ君主制小国家群という国家類型そのものをマクロに捉える試みを行ってきた。これにより、アラブ君主制小国家群を単なる独裁体制として捉えるのではなく、地域に固有の文脈・動態に目を配り、独自の類型として定立する重要性を提起した。 本年度はこうした昨年度までの成果を発展させ、ヨルダン・ハーシム王国のみならずその他のアラブ君主制小国家群の各国レベルでの研究蓄積を進めるという目的のもと、研究成果の発表とフィールド調査を行った。 研究成果の発表においては、ヨルダン・ハーシム王国に関する研究を継続的に報告しただけでなく、バハレーン王国との政治過程の比較という試みも発表した。フィールド調査として、平成28年8月20日から10月27日の期間、研究対象地域の現代アラブ君主制諸国、ヨルダン・モロッコ・バハレーンに赴いた。政府公式資料・市民社会組織の発行資料や現地の新聞バックナンバー、並びに現地で流通するアラビア語・フランス語資料の収集や、ヨルダン・モロッコにおける下院選挙の現地調査、さらには、バハレーンにおける諸社会団体(特に、政党及びNGO)に関する資料収集・インタビュー調査に至るまで、前年度までに培ってきた現地での研究ネットワークを活用して調査を行った。これらの活動により、現代アラブ君主制国家群という類型の理解・理論化を昨年度よりも前進させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は現代アラブ君主制諸国のうち、規模の小さな諸国家(以下、現代アラブ君主制小国家群とする)の体制維持メカニズムと脆弱性を、通時的な比較研究によって明らかにしようとするものである。この目的を達するため、昨年度までにヨルダン・ハーシム王国の体制維持メカニズムの解明を試みたほか、現代アラブ君主制小国家群という国家類型そのものをマクロに捉える試みを行ってきた。これにより、アラブ君主制小国家群を単なる独裁体制として捉えるのではなく、地域に固有の文脈・動態に目を配り、独自の類型として定立する重要性を提起した。 本年度はこうした昨年度までの成果を発展させ、ヨルダン・ハーシム王国のみならずその他のアラブ君主制小国家群の各国レベルでの研究蓄積を進めるという目的のもと、研究成果の発表とフィールド調査を行った。 研究成果の発表として、4度にわたる口頭発表と学会誌への論文投稿を行った。口頭発表においては、昨年度までに深めてきた理論的視座を報告したほか、ヨルダン・ハーシム王国とバハレーン王国の国内での社会的合意の形成に対して君主制が果たす役割の比較という観点からの報告を行った。これらの報告を通して頂いたコメントを参考にしながら、学会誌への論文投稿を行い、現在審査中となっている。 その後、さらに研究を深めるため、平成28年8月20日から10月27日の期間に、3ヶ国(ヨルダン・ハーシム王国、モロッコ王国、バハレーン王国)にわたるフィールド調査を遂行した。下院議会選挙に関する情報収集及び選挙運動での観察、加えて、政党や市民社会組織におけるインタビュー調査を行い、これらの国家における政治と社会の関係性に関する様々な情報を収集することができた。ミクロレベルでの現代アラブ君主制に関する研究蓄積という今年度の研究目的に照らして言えば、現代の政治をめぐる貴重な情報を集めることができ、非常に有意義な調査であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、アラブ君主制国家群という国家類型の独自性を明らかにするため、ヨルダン・ハーシム王国及びその他のアラブ君主制小国家群の各国レベルでの研究蓄積を進めるという目的のもと研究を行い、アラブ君主制国家での社会的合意の形成、アラブ君主制国家における政治と社会の実態について知見を深めることができた。 次年度は本研究課題の最終年度として、本年度までの研究の総まとめを行っていく。現代アラブ君主制国家群という政治体制類型をめぐる理論的視座と、その政治体制類型の特色、統治の実際に関するミクロな事例分析をまとめ、現代アラブ君主制国家群論を打ち立てることが目標となる。 具体的には、第一に、今年度のフィールド調査で得られたアラブ君主制国家における政治と社会の実態に関する情報を整理し、研究成果としてとりまとめる。第二に、君主制システムのもとでの国内での社会的合意の形成という枠組みと、政治と社会の実態という、これまでに取り組んできた2つの側面の間の相互作用について分析を加え、研究成果としてとりまとめる。第三に、これらの議論をもとに、現代アラブ君主制国家群という政治体制類型のモデルを構築し、研究成果としてとりまとめる。これらの成果は学会報告及び学術誌の投稿に結びつけていきたい。
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Research Products
(4 results)