2015 Fiscal Year Annual Research Report
情動発達におけるOtx2ホメオタンパク質の機能解析
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15J04599
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯島 友也 新潟大学, 大学院 医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | Otx2 / ホメオタンパク質 / 情動発達 / 恐怖条件付け行動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Otx2ホメオタンパク質は初期発生において脳の形成に関わり、欠損すると脳全体が失われる重要な分子である。初期胚において、Otx2は脳領域全体に発現し、発生の過程に伴い著しく減少する。一方、生後脳では視覚機能の発達に関わり、網膜や外側膝状体などの領域で発現し、視覚野へ輸送されることで臨界期の開始と終了を制御していることがわかっている。 このことに加えて、申請者はこれまでに情動に関わる神経核においてもOtx2が発現する事を観察した。脳全域においてOtx2がKOされるOtx2-flox/CamkII-creマウスを用いた恐怖条件付け行動解析では、恐怖記憶の形成異常が見られ、Otx2の発現が情動発達に関わっていることを明らかにしていた。 そして今年度はドーパミン細胞でのみOtx2がKOされるOtx2-flox/DAT-creマウスを用いて行動解析を行った。その結果、DAT-cre個体においても情動の発達が阻害されていることが示された。この結果をCamkII-creマウスで得られたデータと比較し、再解析したところ、どちらのKO個体においても情動発達の阻害が見られるが、CamkII-cre個体ではメスで、DAT-creではオスで情動の発達が阻害されている傾向が明らかになった。 KO個体の行動解析で雌雄差が見られたことを受けて、WT個体のオス、メスにおけるOtx2の局在を免疫組織化学的染色を用いて比較したところ、視床下部領域においてOtx2の局在に雌雄差が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り、Otx2-flox/DAT-creマウスを用いた行動解析を完了し、この遺伝子改変マウスにおいても情動の発達が阻害されていることが明らかになった。 この結果をOtx2-flox/CamkII-creマウスと比較すると、CamkII-creマウスではオスに比べてメスで情動発達が阻害され、一方、DAT-creではオスで情動発達が阻害されている傾向が明らかになった。このことから、これらKOマウスではどちらも情動発達の阻害が見られるものの、実際には異なる表現型であることが示唆された。 KO個体の行動解析で雌雄差が見られたことを受けて、WT個体におけるOtx2の局在を免疫組織化学的染色を用いてオスとメスで比較を行ったところ、視床下部領域において、メスの方が染色が強く、オスでは弱い傾向が見られることが明らかにした。 また、中隔核や扁桃体などのOtx2の発現が見られる情動関連領域では、局在に雌雄差は見られなかった。これらのことから視床下部領域でのOtx2の局在には雌雄差が見られ、性的二型を示すと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Otx2の免疫組織化学的染色において、視床下部領域の染色に雌雄差が見られたことから、今後はこの領域についての研究を計画している。なお、この領域にはOtx2が発現していないことを既に確認しており、他の領域からOtx2が輸送されて視床下部に蓄積したことが示唆される。また、視床下部領域はホルモンの分泌に関わっており、物質の通り抜けが可能な有窓血管と呼ばれる構造を持っている。さらに、当研究室では以前に血液中にOtx2が存在していることを示唆するデータが得られている。これらのことから、視床下部領域のOtx2は血液中から輸送され、蓄積したのではないかという仮説が立てられ、現在は血中Otx2量と視床下部のOtx2量の相関について解析を試みている。 血液の解析において、血中に多量に含まれるアルブミンを始めとしたタンパク質の存在により、未処理の血清からはOtx2の検出が難しいことがこれまでに明らかになった。今後はOtx2の検出に適したアルブミン除去法を検討し、解析を行おうと計画している。 また、血液解析と並行して、視床下部でみられるOtx2の局在の雌雄差が視床下部領域の働きに影響を与えるかをc-fosタンパク質の抗体染色や血中に分泌されたホルモンを解析することにより明らかにしたいと考えている。
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