2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J04743
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山崎 由理 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 農業流域 / 窒素流出 / 河川水質 / 窒素起源 / イオン組成 / 窒素安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,河川水中のイオン組成および付着藻類の窒素安定同位体比(δ15N)を調査し,農業流域における河川水質の特徴と河川水中の窒素の起源について考察した。 北海道東部の十勝地域および釧路地域において,森林流域・畑作流域・畑酪混合流域・酪農流域の8地点を選定した。2015年7月および9月(平水時)に河川水を採取し,Na, Mg, K, Ca, NO3, NO2, Cl, SO4, PO4およびHCO3の10項目のイオン組成を分析した。また,調査地点の河床に1ヶ月間コンクリートブロックを設置し,ブロックに付着した藻類を採取した。採取した付着藻類は自然乾燥させてからδ15Nを計測した。 河川水のトリリニアダイアグラムから,全調査地点はCa-HCO3型に分類されたが,畑作流域のみその他の流域とは異なる傾向を示した。森林流域は,河川水中の溶存イオン濃度が低く,NO3も0.3 mg/L以下と低濃度を示した。δ15Nは0.32‰であり,森林流域の河川水中の窒素成分は降水由来であると推定された。畑作流域は河川水中の溶存イオン濃度が高く,高濃度のSO4およびNO3が特徴であった。畑酪混合流域の溶存イオン濃度は森林流域と同程度であるものの,NO3濃度が高い傾向にあった。畑作および畑酪混合流域のδ15Nは2.1-5.4‰を示し,9月の採取時に上昇する傾向がみられた。化学肥料由来のδ15Nは0‰に近い数値を示すことから,両流域では化学肥料由来の窒素成分が河川へ流出している可能性が高い。酪農流域は,河川水中の溶存イオン濃度が畑作流域と同程度に高く,HCO3が支配的であった。NO3は比較的低濃度だが,δ15Nは9.6‰と最も高い数値を示した。畜産排水由来のδ15Nは10‰前後となることが報告されており,酪農流域では家畜ふん尿由来の窒素流出が問題であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,研究内容の一部である河川水中の窒素成分の起源について,付着藻類の窒素安定同位体比(δ15N)を解析し,農業的土地利用によって窒素の起源が異なることを確認できた。この結果は,十勝川水系の窒素流出に関する体系的な研究のなかで新しい知見であり,流域からの窒素流出抑制を考察する上で重要なデータとなることが期待される。 また,十勝川水系の小流域において河川水質の定期観測,電気伝導率(EC)および水位の連続観測を継続的に実施した。対象流域では,小型UAVを用いた詳細な土地利用画像の取得も試みた。取得したデータは,現在解析を進めており,その成果を次年度に報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,十勝川水系の小流域において河川水質調査を継続し,これまでに取得したデータをパラメータとして,小流域を対象とした窒素流出のシミュレーションモデルを構築する。十勝川水系の窒素負荷量の推定および窒素負荷削減の目標値を検証し,流域の特徴に適した窒素流出抑制対策について考察を加える。また,今年度新たに取り組んだ安定同位体比の解析についても,解析対象や方法を精査し,引き続き観測を行う予定である。次年度は最終年度にあたるため,これまでの研究成果を論文としてまとめることを目標に研究を進めていく。
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Research Products
(1 results)