2015 Fiscal Year Annual Research Report
石英ラマン圧力計の超高圧変成岩への適用:変成履歴を残留圧力から読み解く
Project/Area Number |
15J04749
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田口 知樹 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 残留圧力 / ラマン分光分析 / 石英ラマン圧力計 / ザクロ石 / 蘇魯帯 / 超高圧変成岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
ザクロ石中の石英包有物が保持する残留圧力から超高圧変成岩の変成条件を定量的に見積もるため、今年度は中国東部の蘇魯帯楊庄地域に産する超高圧変成岩に着目し、ザクロ石内のSiO2多形相の分布、その残留圧力測定及び包有物共生に基づく熱力学的解析を組合せ、累進変成履歴を検討した。ザクロ石は包有物共生及び不連続な組成変化からInnerとOuter部に分割され、その境界はGrs成分の不連続変化によって定義された。各部のSiO2相の特徴と見積もられた変成条件は以下の通りである。(1)Inner部:SiO2相は全てα石英で、コース石からの相転移を示唆する多結晶集合体及び放射状クラックは認められない。石英は総じて高い残留圧力を保持する(最大0.9 GPa)。また、ザクロ石に包有される鉱物共生及び石英ラマン圧力計から、緑簾石角閃岩相-石英エクロジャイト相条件の圧力温度値が見積もられた。(2)Outer部:SiO2相はクラックが発達したコース石仮像が大半を占めるとともに、藍晶石包有物中に本地域では初となる残存コース石を発見した。しかし、残留圧力を保持する石英は全く認められなかった。Outer部に包有される鉱物共生から、コース石エクロジャイト相条件が得られた。上記の結果は、Inner部のSiO2相はザクロ石にα石英として包有された後、コース石への相転移を免れ、現在も累進変成作用初期の圧力情報を保存していることを意味する。また、Outer部に認められるSiO2相は、コース石としてザクロ石へ包有されて、上昇時にそのほとんどが石英へ相転移し、残留圧力が開放されたことを示唆する。これらの結果は、岩石学的研究と石英ラマン圧力計によるSiO2相の残留圧力測定を相補的に用いる事で、超高圧変成岩の場合でさえも、累進変成作用時の変成圧力温度履歴を緻密に制約できることを示した重要な成果であると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、中国東部の蘇魯帯楊庄地域に産する超高圧エクロジャイトの分析を進め、石英ラマン圧力計による残留圧力測定の結果に基づき、累進変成作用時の変成条件の制約を行うことが出来た。今年度の成果は、国内学会において口頭及びポスター発表を行い、研究発表優秀賞を受賞するなど高い評価を得た。なおこの成果をまとめた論文は、現在国際誌へ投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の主たる成果は既に論文として国際誌へ投稿済みであり、査読結果を待つだけの状況である。査読結果に対して、必要に応じて適宜追加データを収集する予定である。また、今後は蘇魯帯の他地域で採取済みの岩石試料を用いて実験室での分析を継続し、岩石学的特徴とSiO2相が保持する残留圧力に関する系統的なデータを収集することで、蘇魯帯における累進変成作用時の変成圧力温度経路の決定を目指す。
|
Research Products
(4 results)