2015 Fiscal Year Annual Research Report
高い水溶性を有するアザクマリニルメチル型光感受性保護基の高度化とその応用研究
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15J04754
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高野 皓 東京医科歯科大学, メディシナルケミストリー分野, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ケージド化合物 / 光感受性保護基 / アザクマリン / 水溶性 / 光分解反応 / 暗所化安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の化学素反応から高度に構築されている生命現象を詳細に解明するには、その過程で形成される短寿命な過渡的複合体の高次元な変化を高い時空間分解能で解析する手法が求められている。この準不安定な複合体を捉えることができる手法の一つに、光感受性保護基を駆使して生理活性を光でコントロールするケージド化合物の利用が挙げられるが、生理活性分子の精密な制御のためには水溶性や光反応性に加えて生理的条件下での安定性を網羅した光感受性保護気の開発が必要とされている。 そこで、本研究ではそれら条件を満たした保護基を見出すべく、クマリン骨格の5位に窒素原子を導入した5-アザクマリン型光感受性保護基の合成および機能評価を行い、生理的条件下 (37 ℃) 、加水分解に対しては安定であるが光照射を契機に素早く生理活性分子の放出が起こる光特異性を高めた保護基の創製を目指す。本年度の研究では、5-アザクマリン骨格の合成研究に取り組み、以下の結果を得た。 2,5-dibromopyridineを出発原料として、メトキシ化とヒドロキシ化、6位の臭素化を行い、6-ブロモ-5-ヒドロキシピリジンへ誘導した。続いて、MOM保護を行った後、Pd触媒を用いる溝呂木・Heck反応によりアリルエステルを導入した。その後、TFAによるMOM基の脱保護、続くホスフィンを用いた環化によって5-azacoumarin骨格の構築に成功した。最後に、4位のメチル基をセレニウム酸化とNaBH4による還元によってメチルアルコール体へと導くことで、目的とする5-azacoumarin-4-ylmethyl基の合成を達成した。メチルアルコールをアセチル化した擬似ケージド化合物の光化学的特性を評価した結果、365 nmの光照射に対して光分解反応が進行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5-アザクマリン型光感受性保護基の開発研究では、報告例や類似の合成例が乏しいながら5-アザクマリン骨格の合成法を開発することに成功した。しかしながら、暗所下安定性を評価する上で根幹となる3位のハロゲン化を種々の5-アザクマリン誘導体に試したものの、期待通りにハロゲン化された化合物が得られない結果となった。そのため、官能基化を行う段階の検討および合成ルートの変更を試みているところである。 以上のことから本研究は、少し遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 5-アザクマリン型光感受性保護基の開発研究 これまでに見出した5-アザクマリン骨格の合成法において、ハロゲン化する段階の検討を行う。具体的には、5-アザクマリン骨格構築後のハロゲン化が進行しなかったため、環形成前のアリルエステル部位への官能基修飾を行うルートを検討する。万が一、3位へ官能基の導入が困難であれば置換位置を変えた誘導体を合成する。種々の合成ルートを精査した後、ハロゲン化された5-アザクマリン型光感受性保護基を合成し、暗所化安定性評価、光化学的特性評価を行うことで本設計の優位性を明らかにする。また、併せて長波長化を志向した分子設計の検討も行う。それら評価結果をもとにアザクマリン型光感受性保護基の最適化を図る。 2) ターゲティング機能を持たせた光感受性保護基の開発研究 高度化したクマリニルメチル型光感受性保護基にターゲティング機能を付与し、構造変化により光分解反応が誘起される新規光感受性保護基の開発を行う。具体的には、最適化したアザクマリン骨格に共役系を介してテトラジンの導入を行う。光照射を行うことで光分解の進行がPETによって抑制され (Lock状態)、シクロプロペンと選択的な反応により光分解反応が開始すること (Unlock状態) をHPLC分析によって検証する。最後に、腫瘍細胞に集積するペプチド (pHLIP) にシクロプロペンを導入し、細胞実験を行うことでターゲティング機能を持ったケージド薬剤がDDSへ適用可能であるかを検討する。これらの課題を進め、高度化され付加価値を持った光感受性保護基を開発できた場合には、実際に生理活性分子へ導入することによって生物学的応用を試みる。
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Research Products
(7 results)