2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本国憲法における法規範定立の研究―法律、法規命令、行政規則の関係について―
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15J04794
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮村 教平 大阪大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 法的拘束力 / 授権 / 法規命令 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、命令と行政規則の区分規準である「授権」と「法的拘束力」の関係性にかかるドイツの議論を把握する。その成果を、日本国憲法において解釈上受容できるか検討したうえで、日本国憲法解釈上の「命令」と「行政規則」の関係性を明らかにすることを目的とした。 そうした目的の下で研究を進めた結果、ドイツ公法学においては、政府・行政の民主的正統性に依拠することで、法規命令・行政規則を相対化し、行政規則それ自体にも一定の法的拘束力を認めようと論証する見解が近時有力となっていることが判明した。しかし、戦後ドイツ公法学において民主制原理を権力分立論に組み込んだ主たる論者の見解を検討したところ、「行政により制定された規範の法的拘束力の有無は、政府・行政の民主的正統性の問題ではなく、法律による授権の有無に対応する」という結論に至った。 ここで得られた示唆は、わが国の公法学において適用可能であり、従来の講学上の概念である「法規命令」と「行政規則」の区分とは独立して、行政が定立した規範が裁判所に対する法的拘束力を備える契機を、法律による「授権」に見いだすことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究会発表の機会は持ちえなかったものの、交付申請書に記載した通りに研究を遂行することができた上に、その成果を公表する段階に至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に計画されていた研究目標の達成に努める。もっとも、議会が特定の事項の規律を命令に授権する要因として掲げられるところの「規律の専門性・迅速性」を含む「議会の負担軽減」の意義の解明が、第一次的な目標とされる。というのも、当初に予定されていた「命令制定への議会の関与」に関する研究は、この「議会の負担軽減」と密接に関連するからである。
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