2015 Fiscal Year Annual Research Report
全国の砂浜生態系を対象とした海面上昇に対する適応策の最適化手法の開発
Project/Area Number |
15J04833
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 惇 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 都市経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,1)従来の生物多様性の経済分析では考慮されてこなかった連続距離の次元を導入したモデルを開発し,どのように市場の失敗が起きているか理論的に明らかにすること,2)その市場の失敗を緩和する政策として最適な土地利用政策を提案することである. 本年度は,目的1)について研究を行った.従来研究では,仮想的なバイオマス市場において捕食者と被捕食者が自身のバイオマスを取引しているという仮説をもとに生物モデルを構築していた.都市拡大により被捕食者(植物)の供給が少なくなることで,その上位の生物の個体数が減り,生物多様性が減少することを説明している.また,都市拡大による生物多様性の損失の負の外部性があるため,最適な都市サイズは市場均衡よりも小さいことを示した. これに対して,本研究では,経済活動と生物多様性の相互関係が人間と生物の距離に依存することに着目した.例えば,大型の肉食動物は生物多様性を構成する重要な生物であるにもかかわらず,人間に接触した場合には怪我などの危険を与えてしまう.生物―人間の相互作用を分解すると,「人間と生物が同じ場所にいるとき,怪我や死亡の危険が生じる」,「その負の外部性の大きさは,各場所での人口密度・生物の個体数とその滞在時間に依存する」.自然との調和を考えた都市政策を行う際には,距離の次元を導入した経済モデルが必要である.しかしながら,従来の研究では,都市と自然生息域が単純な離散の2地域で扱われているため,面積変化による外部性しか考慮できないという問題点があった.従来の生物モデルに連続距離の次元を導入し,種間の捕食被捕食の関係性を空間的土地利用で説明するモデルを構築した.次に,従来の都市経済モデルに開発した生物モデルを結合し,都市サイズおよび,都市と自然地域の各地点における人間と生物の土地利用がどのように市場の失敗を引き起こしているか明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主として環境経済学に関する学術誌から生物多様性と土地利用に関する研究のレビューを,都市経済学に関する学術誌から最適土地利用政策に関する研究のレビューを行うことで,モデル構築に必要な知見の習得ができた. この知見をもとに,肉食動物・草食動物・植物で構成される一般的な3種の食物連鎖で構成される生物モデルに連続距離次元を導入し,種間の捕食被捕食の関係性を空間的土地利用で説明するモデルを構築することができた.これを従来の都市経済モデルに結合させ,都市と自然地域の各地点において,どのように市場の失敗を引き起こしているか理論的に明らかにできたため,ほぼ順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって,自然地域と都市の各地点で市場の失敗が生じていることが明らかになった.野生生物は,都市政府が行う規制や政策に従わないので,生物の各地点の土地利用を最適に調整することは望めない.そこで,その市場の失敗を緩和するために,最適土地利用政策(都市サイズ規制,自然地域のすべての地点の植生密度調整)の提案を行う予定である.
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Research Products
(2 results)