2015 Fiscal Year Annual Research Report
金属ドープSrTiO3光触媒の構造-励起ダイナミクス-光触媒機能相関の究明
Project/Area Number |
15J04851
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
PARK YOHAN 神戸大学, 理学(系)研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 光触媒 / 金属酸化物 / ペロブスカイト構造 / 金属ドーピング / 電子励起状態 / 化学反応メカニズム / チタン酸ストロンチウム / ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水を分解して水素を生産する為の光触媒を研究する。従来研究の多くは既知の半導体に様々な元素を添加して少しでも反応効率の高い触媒材料を探索するものであった。本研究は新しい光触媒を数多く合成するのではなく、より根本的な課題の光触媒の反応効率を決定するパラメーターと、それが反応効率を決定する理由を明らかにする。最終的には、光触媒による水分解反応の量子効率を決定するメカニズムを究明して高効率の光触媒を探索する為の指針提示が目的である。本研究では、水分解光触媒として良く研究されているペロブスカイト構造のSrTiO3を選んで行った。 本年度(平成27年度)では、そのパラメーターを探る為に固相合成法・溶媒熱合成法・融液合成法(熔融塩合成法)の3つの合成方法とGa3+またはTa5+の酸化数が異なるドーパントをドープした。作製した金属ドープSrTiO3光触媒はXRD・拡散反射UV-Vis・ラマン分光・ATR方式のFT-IR測定を用いて物性分析を行い、合成方法・金属ドーパントの種類による違いを得ることができた。また、韓国のYeungnam Universityの協力を得て、FE-SEMの測定を行って粒形の違いも分かることができた。 さらに、光触媒の反応に関わる励起電子の分析の為、紫外線を照射しながらFT-IRを測定して合成方法・金属ドーパントによる違いを分かることができた。 次年度(平成28年度)には、これらの結果と合わせられる補足実験を行って、これらの結果が反応にどのような影響を与えるのかを究明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(平成27年度)は、水分解光触媒として用いられるペロブスカイト構造のSrTiO3にGa3+またはTa5+の金属ドーパントをドープした固相合成法・溶媒熱合成法・融液合成法(熔融塩合成法)で作製した。作製した金属ドープSrTiO3光触媒はXRD・FE-SEM・拡散反射UV-Vis・ラマン分光で物性を分析して合成方法・ドーパントによる違いを分かることができた。 また、紫外線を照射しながらFT-IRを測定して、光触媒の活性にかかわる励起電子を分析したところ、既存の研究(Ga3+は励起電子-正孔の再結合を抑制し、Ta5+は促進する)とは異なる結果が得られた。 これらの結果で、合成方法・金属ドーパントが電子-正孔再結合に及ぼす影響をわかることができたので、目標である光触媒の効率を決定するパラメーターを探すことができた1年だった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度(平成28年度)は、目的を達成するために、前年度(平成27年度)までに固相合成法・溶媒熱合成法・融液合成法を用いて合成したGa3+やTa5+のドーパントをドープしたSrTiO3光触媒の反応速度を調べるためにメチルオレンジ色素を用いて吸着及び光分解反応実験を行う。 得られた結果をもとにして、ドーパントの価数と置換位置による光触媒反応速度と電子-正孔再結合速度との相関を分析し、量子効率を決定するメカニズムを推測する。そのため、申請者の母校である韓国Yeungnam大学でY. Sohn教授の協力を得て光触媒粒子の形状と表面積をFE-SEMやBET法で計測評価し、さらに立川貴士准教授(神戸大学)のもとでフォトルミネセンス(PL)を測定する。 これらの結果をもとにして良い光触媒反応速度を示したドーパントを選んで、粒子内部から外周にむかってドーパント濃度が増大あるいは減少するような濃度傾斜をもたせたcore-shell型のSrTiO3光触媒を合成する。EDX・FE-SEM・XPS・BET・PL・TR-IRによる評価結果を、メチルオレンジを分解する光触媒反応速度と対応させて、ドーパントが励起ダイナミクスと光触媒活性に及ぼす影響を総括する。これらの成果を平成29年3月開催予定の第119回触媒討論会で発表するとともに、国際学術誌(Journal of Physical Chemistryなど)にオープンアクセスオプションを附帯して上梓する。
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Research Products
(4 results)