2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分化の可塑性を制御する核内構造ダイナミクスの解明
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15J04853
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 梓 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | エピゲノム / 成人T細胞白血病 / HTLV-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年7月より京都大学iPS細胞研究所から京都大学大学院医学研究科に籍を移し研究を継続している。シーケンサーから出る膨大なデータの解析手法の修得は必須であり、受け入れ研究者の指導のもと、シーケンスデータの解析を行っている。 昨年度より成人T細胞白血病(ATL)の発がんメカニズムの解析を行っており、特にオープンクロマチンの状態の違いに着目し研究を進めている。平成29年度をもってATL30症例と比較対照用の健常人9例、またATLと同様にヒトT細胞白血病ウイルスにより引き起こされるHTLV-1関連脊髄症(HAM)7例、HTLV-1に感染しているがATLもHAMも未発症のキャリア4例のATAC-seqデータの取得を完了した。これらの実験では、ATL症例という細胞数が限られたサンプルを使って実験を行うため、初年度に確立させた”少数の細胞からのクロマチン構造解析技術”の有用性が高い。解析の結果、健常人と比較して、ATLではオープンクロマチンの状態が大きくことなることがわかり、ATL特異的にオープンとなっている領域ならびにクローズになっている領域がそれぞれ3000箇所程度あることが明らかとなった。モチーフ解析等により、これらの領域特異的に機能していると推定される転写因子の絞り込みを行い、検証実験を行っている。また、本研究に必須であるHTLV-1ゲノムにコードされるウイルスたんぱく質がATL発症にどのような影響を与えているのという知見をまとめた総説がFrontiers in Microbiologyに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)の症例サンプルとキャリア検体から、HTLV-1感染細胞のみを回収するためにはCD4陽性CD45陽性のT細胞をフローサイトメトリーを用いて回収する必要があるが、平成29年度をもって予定していた数の症例データの収集を完了した。解析を進めた結果、成人T細胞白血病(ATL)症例で特異的にクロマチンがオープンまたはクローズになっている領域がそれぞれ30000箇所程度存在することが明らかになった。これらの領域の配列情報からATLで機能が亢進または減弱していると推定される転写因子の絞り込みが可能となり、現在実験的な検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は平成29年度に得られたシークエンスデータの解析に注力し、ATLで特異的に機能亢進または減弱している因子の絞りこみをより精度を上げて行う。 また、その解析結果を元に実験的検証を進める。具体的にはATLで機能が亢進していると推定される転写因子においてはノックダウン実験を行うなどし、ATL細胞における機能の確認を行う。機能が亢進または減弱している転写因子と、HTLV-1にコードされるタンパク質との結合の有無を確認を行い、ウイルス側因子が宿主の転写ネットワークに与える影響について検証を行う。また、これらの転写因子の転写機能にHTLV-1がどのような影響を及ぼすのかをルシフェラーゼアッセイを行い調べる。
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Research Products
(3 results)