2015 Fiscal Year Annual Research Report
失敗への挽回から見る文化課題の役割と文化特有の心理傾向への効果
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15J04887
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
富永 仁志 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 文化心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,日本における行動実験データを収集した.合計54名の学生が実験に参加し,経済ゲームと質問紙への回答に取り組んだ.経済ゲームは実在の他者との利益・損益分配を判断させるもので,実験参加者の利己的もしくは利他的行動傾向を,それぞれに対応する試行に対する承諾率として算出した.質問紙は,行動抑制システム・行動接近システム尺度(BIS/BAS; 安田・佐藤, 2002),多次元共感性尺度(登張, 2003)や文化的自己観尺度(Singelis, 1994)などを含むもので,それぞれの尺度への回答から各個人特性を算出した. 分析の結果,利己的行動傾向に対して,相互協調的な文化的自己観尺度と行動抑制システム尺度との交互作用が認められた.相互協調的自己観とは人間の理想的な在り方として他者との関係性を重視する価値観であることから,この結果は次のように解釈された.日本人においては他者との関係性を重視する程度が高くかつ行動抑制システムが強い個人は,利己的な行動を抑制する傾向にある.また,文化課題理論(Kitayama et al., 2009)に基づいて,利己的な行動の抑制は相互協調的自己観を体現するための日本における文化課題のひとつである,という考察を与えた. この結果の妥当性を確認するために,若干数のデータ追加を行い,次年度以降も日本における行動実験データを引き続き収集する方針を決定した. 次年度から始まる欧米圏(アメリカ)でのデータ収集に向けて,実験に使用するプログラムや質問紙の英訳作業を行った.訳によって内容がむやみに変化しないよう,ネイティブスピーカーに協力していただき,バックトランスレーションによる内容の再確認も行って英訳版を作成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに国内でのデータ収集が順調に進んでおり,来年度以降はアメリカでのデータ収集を開始・完了し,両文化のデータを比較解析できる段階まで進めていく予定である.3年間の研究期間内に,一定の研究成果を得ることが見込まれる.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度には,欧米圏(アメリカを予定)でのデータ収集を実施し,国内でもデータを追加することで,両文化での行動傾向を比較するに十分なサンプルサイズを確保する.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Are common names becoming less common? The rise in uniqueness and individualism in Japan.2015
Author(s)
Ogihara, Y., Fujita, H., Tominaga, H., Ishigaki, S., Kashimoto, T., Takahashi, A., Toyohara, K., Uchida, Y.
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Journal Title
Frontiers in Psychology
Volume: 6:1490
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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