2016 Fiscal Year Annual Research Report
微生物燃料電池における窒素動態の解明とそれを利用した低環境負荷型窒素除去法の開発
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15J04909
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
本山 亜友里 岐阜大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 微生物燃料電池 / アンモニア除去 / アンモニアの放出 / アンモニアガス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、一槽型微生物燃料電池による廃水処理における窒素濃度の減少の要因の一つとして考えられているアンモニア揮散について、揮散量の検証を中心に研究を進めた。 一槽型微生物燃料電池を用いて廃水を処理すると、有機物濃度の低下と共に栄養塩類の一つである窒素の濃度が大きく減少することが報告されている。この窒素濃度の減少の主要因として、電極反応による局所的なpH上昇により、廃水中のアンモニウムイオンの解離が進んで溶存アンモニアの割合が増える結果、エアカソードを通じて大気汚染物質であるアンモニアガスとして大気中に放出されている(アンモニア揮散)と考えられてきた。これは、Kimらの報告(Kim et al., Biotechnol Bioeng, 2008)が根拠とされている。 Kimらの実験とほぼ同一の条件で実験を行ったところ、電流量あたりのアンモニア減少速度が、Kimらの報告と同等であることを確認できた。しかしながら、この実験における窒素濃度の減少は、人工廃水中に含まれる共存イオンが電極で反応し、その生成物とアンモニアが反応したためである可能性が考えられる。そこで、そのイオンを排除して同様の実験を行った結果、電流量あたりのアンモニア減少速度は約1/10にまで低下した。このことは、最初の実験において、アンモニアガスの揮散はほとんどなく、アンモニアの大部分が別のメカニズムによって除去されたことを示唆している。すなわち、一槽型微生物燃料電池における窒素濃度の減少の主要なメカニズムであると従来考えられていたアンモニアガスとしての放出の量は、実際にはこれまでの推定値よりも少なくとも約1桁低いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画で今年度は、一槽型微生物燃料電池内部の窒素除去関連物質の濃度分布測定へ向けた検討及び一槽型微生物燃料電池におけるエアカソードのガス透過性が窒素除去に与える影響についての検討を進めていく予定であった。しかしながら、微小電極を用いた実験が予想以上に難しく失敗を繰り返したことや、時折体調不良に見舞われたことから思うように研究が進まなかった。一方で、上記理由から研究計画を見直して当初の計画とは少し違うアプローチで窒素動態の解明も試みた。その結果、アンモニア減少の大部分は、従来は有力だと考えられていた説とは別のメカニズムに起因していることを強く示唆するデータを得た。これは、本研究の目的に関する本質的で重要なデータであることから、総合的に判断して上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より、これまでに一槽型微生物燃料電池における窒素濃度減少の主要なメカニズムとして考えられていた「アンモニア揮散」はほとんど起きていないことが強く示唆されたため、今後はまずその検証を重点的に行う。具体的には、密閉容器内で一槽型微生物燃料電池を運転して廃水を処理し、気相中のアンモニアガス濃度を測定することで揮散量を正確に把握する。その結果、揮散量がわずかであることが確認できれば、アンモニアが主にどのような形態として除去されたのかを明らかにするために、実験前後における窒素の物質収支を把握する。 また、上記の検討を優先的に進める方針ではあるが、微小電極を用いた一槽型微生物燃料電池内部の窒素除去関連物質の濃度分布測定についても行う予定である。
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