2015 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫のヘム生合成に関与する膜輸送タンパク質の同定
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15J04920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松谷 啓介 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ヘム生合成 / アピコプラスト |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯熱マラリア原虫のヘム中間代謝産物の輸送を明らかにするために、ヘム生合成に重要な細胞小器官であるアピコプラストの役割について解析を行った。アピコプラストを薬剤により除いた熱帯熱マラリア原虫を作製した。そのアピコプラスト除去原虫にヘムの前駆物質である5-アミノレブリン酸(ALA)を加えた。ALAを加えて、培養し蛍光顕微鏡でヘム中間代謝産物の蓄積を確認した。その結果、ヘム生合成に重要なアピコプラストを欠損した原虫でヘム中間代謝産物の蓄積が確認された。興味深いことに、その蓄積はアピコプラストを持つ野生型の熱帯熱マラリア原虫と異なっていた。野生型の熱帯熱マラリア原虫では、ヘム中間代謝産物の蓄積は食胞であったが、アピコプラスト除去原虫では細胞質に蓄積していた。蓄積したヘム中間代謝産物をHPLCで解析を行った。その結果、野生型とアピコプラスト除去原虫では蓄積したヘム中間代謝産物に変化はなかった。 これらの結果により、熱帯熱マラリア原虫はヘム生合成に重要なアピコプラストを欠損していてもヘムを合成できることが明らかとなった。これは、熱帯熱マラリア原虫が宿主であるヒト赤血球からヘム生合成に必要な酵素を取り込んでいる可能性を示した。また、ヘム中間代謝産物の蓄積が異なっていたことから、アピコプラストが食胞とのヘムの輸送に関与していることが明らかとなった。 アピコプラストはヘム生合成には必要ないが、ヘム中間代謝産物の輸送には重要な役割を果たしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在行っている研究である「熱帯熱マラリア原虫のミトコンドリア電子伝達系を標的とした新規薬剤の開発」において、熱帯熱マラリア原虫のミトコンドリア電子伝達系の酵素群で未だに詳細な機能の分かっていない、また阻害剤が見出されていない複合体IIに関して新規阻害剤を見出した。現在、その阻害剤の熱帯熱マラリア原虫の阻害効果、複合体IIのケミカルバイオロジーの解析を行った。その結果をまとめ論文に投稿中である。この研究と合わせて研究課題である熱帯熱マラリア原虫のヘム生合成に関与する膜輸送タンパク質の同定を行っているために進展状況がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
熱帯熱マラリア原虫のアピコプラストはヘム中間代謝産物の蓄積に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、ヘム生合成の酵素は宿主であるヒト赤血球から取り込んでいることも考えられた。 ヘム生合成の輸送にアピコプラストが重要な働きをしていることも明らかとなったため、アピコプラストに局在すると考えられる膜輸送タンパク質であるPfMDR4をCRISPR/Cas9システムにより遺伝子破壊を行う。その遺伝子破壊株にALAを加えることにより、ヘム中間代謝産物の蓄積の変化を蛍光顕微鏡で観察し、その蓄積したヘム中間代謝産物をHPLCで解析する。
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Research Products
(7 results)