2016 Fiscal Year Annual Research Report
帝国崩壊後沖縄における南洋群島引揚者の社会史的研究
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15J04929
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
森 亜紀子 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 引揚者 / 記憶 / 南洋群島 / 沖縄 / オーラルヒストリー / 世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、帝国崩壊後沖縄における外地引揚者の内最大多数を占めた南洋群島引揚者の社会史を解明することである。この課題を明らかにするために、本年度は以下四点の研究活動を行った。(1)沖縄に暮らす南洋群島引揚者50名の証言を収録した証言集『複数の旋律を聞く-沖縄・南洋群島に生きたひとびとの声と生-』(新月舎、378頁)を300冊刊行し、国立大学図書館・都道府県立図書館などへ寄贈した。(2)京都民科歴史部会『新しい歴史学のために』290号の特集<特集:移民をめぐる政治史>へ「帝国崩壊後沖縄における南洋群島引揚者-在外財産補償運動を担った開拓世代の経験から-」を投稿した。これにより、沖縄へ帰還した南洋群島引揚者らが台湾・朝鮮・満洲・フィリピン等からの引揚者らと共に沖縄外地引揚者協会を組織し、1950年代後半から80年代後半に至るまで日本政府の責任を問う運動を行っていた点を指摘し、南洋群島引揚者らにとって<引揚>という経験がどのような意味を持っていたのかを明らかにした(平成29年5月に刊行予定)。(3)2月に約三週間沖縄に滞在し、①沖縄県立図書館・沖縄公文書館で沖縄移民史に関する文書史料調査、②うるま市で南洋群島引揚者に関する聞き取り調査を行った。(4)日本植民地研究会からの依頼を受け、三尾裕子・遠藤央・植野弘子編『帝国日本の記憶-台湾・旧南洋群島における外来政権の重層化と脱植民地化-』(慶応義塾大学出版会、2016年)の書評を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)証言集を発刊することにより、これまでのフィールドワークで得てきた成果を社会に還元し、(2)論文の執筆を行うことによりこれまでの研究によって明らかになった点を学会誌に公表することができた。(3)沖縄での調査では、新たな資料を発掘することによりこれまでの認識をさらに深めることができ、(4)本研究課題と密接に関連する書籍の書評を執筆することにより、先行研究に照らした際の本研究の独自の意義と課題を確認することができた。以上(1)~(4)の活動を通して、本年度は当初予定していた以上の成果を得ることができたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に新たに得られた資料を用いながら、得られた知見を論文として公表したい。
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Research Products
(2 results)