2016 Fiscal Year Annual Research Report
計算機進化によって器官の成長制御機構を明らかにする
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15J04931
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣中 謙一 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | サイズ制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験パートにおいては、前年度で開発した計測系を用いて、ショウジョウバエ(Drosophila)属9種(D. melanogaster, D. simulans, D. atripex, D. pseudoobscura, D. willistoni, D. quadrilineata, D. virilis, D. mercatorum, D. repleta)における幼虫の成長曲線、成虫原基の成長曲線、臨界重量に関するデータ等を取得した。また、幼虫期の各齢のサイズに対してロジスティック回帰を行うことで、脱皮時の幼虫サイズを取得した。これらのデータから、9種間で最大サイズで三倍・総発生時間で二倍以上異なるにもかかわらず、各発生イベントは相対タイミングの意味でほぼ一定の値を取っていたことがわかった。特に、臨界重量に到達する相対タイミングは、我々が提案する完全変態昆虫の生活史モデルから予測される最適タイミングと近い値を取っていることがわかった。さらに、変態を引き起こすホルモンであるエクダイソンの濃度の時間プロファイルを質量分析計によって取得し、臨界重量の到達時点から指数的に増加していく傾向があることを幾つかの種において確認した。 理論パートにおいては、従来のBreakpoint法はSegmented Linear Regressionを用いる前にデータを回転させるため、結果が回転角度に大きく依存して変わるという問題点があった。この問題点を克服するため、従来手法の開発者であるLake forest collegeのAlexander Shingleton准教授と議論を行い、データの正規化と直交回帰に基づくパラメータフリーなBreakpoint法を新たに開発した。また、完全変態昆虫の生活史モデルにおける臨界重量の最適タイミングについての新たな導出法を編み出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の理論パートにおける結果をまとめた論文がJournal of Theoretical Biology誌に掲載された。その後の進展をまとめた論文も現在執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
身体-器官のプロポーションを決定する内分泌系の研究において想像以上の進展があったので、今後は内分泌系の実験研究にエフォートを優先的に割いていく。 特に平成29年度は、キイロショウジョウバエの幼虫発生において器官特異的な遺伝子ノックダウン等を行い、身体や器官(脳・翅原基・脂肪体など)の成長過程にどのような影響がもたらされるかを調べる。同様の実験を異なる栄養環境下においても行い、栄養状態に対する成長応答のメカニズムをまとめ、前年度までに構築した理論との比較を行う。 さらに計画期間に余裕があれば、傍分泌系・摂食分泌系の理論解析や実験検証も行う。
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Research Products
(7 results)