2015 Fiscal Year Annual Research Report
低温ブランチングと脱水凍結の複合処理が農産物の物性および構造へ及ぼす影響
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15J04982
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今泉 鉄平 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 低温ブランチング / インピーダンス解析 / X線CT / 空隙率 / 品質評価 / 有限要素法 / 共焦点レーザー顕微鏡 / ペルオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は当初の計画通り、熱湯浸漬過程における物性および細胞・組織構造変化の把握に重点を置き、最適なブランチング条件について検討を行った。 1.熱湯浸漬処理を行ったイモ類の電気的特性変化を調査した。インピーダンス解析により導かれた細胞内抵抗、細胞外抵抗、細胞膜容量は、いずれも70℃以上の高温で加熱を行うことで顕著な変化が現れることを明らかとした。また、加熱した試料をDiIにより染色し、細胞膜構造の変化を共焦点レーザー顕微鏡により観察した。この観察画像においても70℃以上では細胞膜の破壊が伺え、電気的特性との関係性を見出した。さらに、電気的特性が空隙率や弾性率と高い相関性を有することを示した。このことは、インピーダンス計測による食感などの品質評価の可能性を示唆した。 2.ブランチング処理は酵素の失活を主な目的とし、なかでもペルオキシダーゼ(POD)は指標酵素として扱われその失活特性の把握が不可欠である。しかしながら、これまでの実験的な手法によるPOD失活特性の推定では、加熱初期における試料内部の非定常な温度変化について十分な考慮がなされてこなかった。本研究では、有限要素法を用いた数値計算シミュレーションにより非定常下の温度変化を予測し、それに基づくPOD失活シミュレーションを行うことで、失活特性の精確な把握が可能となることを示した。 3.組織構造強化に最も効果的な低温ブランチング(LTB)条件を検討するために、様々なLTB条件で処理した試料を高温で加熱し、その際の軟化傾向を速度論的に解析した。LTB処理試料および無処理試料のいずれにおいても高温加熱時の軟化を指数モデルにより表すことができた。60度で60分間のLTB処理を行った試料では、反応速度定数は無処理試料の1/5程度となっており、この処理が細胞間結着力を高め軟化抑制に効果があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟化抑制効果を最大とするLTB処理条件を確立し、その効果を速度論的な解析により実証した。また、細胞膜損傷、空隙率、含水率とテクスチャとの関係性を明らかにし、テクスチャ制御に有益な知見を見出した。以上、当初の計画通り順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、低温ブランチングと脱水凍結の複合処理が農産物に及ぼす影響を解明することを主な目的としている。平成27年度では低温ブランチングによる効果について重点的に調査を行った。したがって、平成28年度にはさらに脱水凍結工程を組み合わせ、青果物の品質への影響を調査する。この際、微細構造への影響をラマンマッピングや原子間力顕微鏡などの手法により評価する。
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Research Products
(7 results)