2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J05029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀口 晃一郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙論的位相欠陥 / 初期磁場 / 磁場生成 / 宇宙論 / 強結合近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙論的位相欠陥と観測量を結びつけるため、本年度は宇宙論的位相欠陥による初期磁場生成に焦点をあて重点的に研究を行った。現在宇宙に存在する磁場は初期磁場を種として発展してきたと考えられており、その生成メカニズムは大まかに天体物理起源と宇宙論的起源の二種類がある。本年度は宇宙論的起源の初期磁場生成メカニズムの一つとして新しく、宇宙論的位相欠陥による初期磁場生成を提案した。 始めに昨年度から継続して研究してきたテクスチャーと呼ばれる位相欠陥が生成する初期磁場についてその生成メカニズムと生成される磁場の特性を論文にまとめた。ここでは特に初期宇宙での光子とバリオンの強結合状態が磁場生成に対して大きな役割を果たし、磁場の成長とスケール依存性を決定していることが判明した。 次に宇宙論的位相欠陥の一種である宇宙ひもについても、初期磁場の生成を調べ、論文にまとめた。宇宙ひもについてもテクスチャーと同様のメカニズムによって磁場が生成されるため、バリオンと光子が宇宙初期に強結合状態にあることが、磁場生成に大きな役割を担っていた。ただし、宇宙ひもによる初期磁場生成の場合、宇宙ひもが作り出す光子やバリオンの揺らぎの発展の時間依存性等が一意に確定しないため、テクスチャーほど明確に磁場の発展を記述することができないことが分かった。 これらの宇宙論的位相欠陥による初期磁場は宇宙論的スケールで生成され、銀河団やフィラメント、ボイドと言った宇宙論的スケールの構造に付随する磁場の種になった初期磁場として有力な候補の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では一つの宇宙論的位相欠陥に着目し、それが引き起こす物理現象を一つ一つ解析し観測量と結びつけた後に、その手法を用いて他の位相欠陥について研究を進めていく予定であった。しかし、宇宙論的位相欠陥全般が引き起こす物理現象を見極め、物理現象ごとにそれぞれの位相欠陥について研究していく手法をとることで、研究の順序は入れ替わることとなったが、効率よく研究を進められているように思う。 これにより、研究内容の纏まりは非常によくなったが、多様な位相欠陥の研究とN体計算や磁場入りのシミュレーションと言った手法の習得の習得の順序が入れ替わっているため、手法の習得自体は若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
二年時は、まず、現在着手している宇宙論的位相欠陥の一種である宇宙ひもによる重力波の生成の研究を共同研究者と共に完成させる。次に、Planck衛星による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測データを用いて、観測量とその統計的性質についてを学び、観測量についての論文を執筆することでCMBの観測量を解析する手法を習得する。また、それと同時にN体計算と磁場を含めた計算のため磁気流体力学シミュレーションを学び、宇宙論的位相欠陥による効果を考慮したシミュレーションコードの開発に取りかかる。 三年時には開発したコードを用いて宇宙論的位相欠陥が構造形成等に及ぼす影響を議論する。
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