2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15J05029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀口 晃一郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / 相転移 / 宇宙論 / 宇宙論的位相欠陥 / 宇宙ひも / テクスチャー / 重力波 / 重力レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
初期宇宙の相転移を探るため、宇宙ひもやテクスチャーと言った相転移の結果宇宙空間に特殊な領域である宇宙論的位相欠陥の観測可能性を探っている。 まず、宇宙ひもと呼ばれるひも状の高エネルギー領域についての成果を説明する。宇宙ひもの形状は環状のloopと輪になっておらず伸びているinfinite stringの二種類が存在する。今回我々はinfinite stringに着目し、そこから放出される重力波の観測可能性を調べた。これらのinfinite stringはネットワーク状に分布しており、重力波はkinkと呼ばれる尖った構造が歪んだinfinite string上を伝搬することで放出される。我々が観測し得る重力波はinfinite stringのネットワーク構造とkinkの尖り具合や分布に依存しており、これらを統合的に数値計算を用いて解くことで、infinite strin由来の重力波の大きさや振動数依存性を見積もることができた。これにより、将来的にinfinite string由来の重力波がaLIGOやDECIGOといったレーザー干渉計の実験で直接観測されうることが示唆された。 次に、テクスチャーと呼ばれる形のない特殊な領域について成果を説明する。今回はテクスチャーが作る重力場の歪みに着目し、宇宙マイクロ波背景放射を歪める効果や、銀河の像を歪める効果を見積もることで、将来観測によるテクスチャーの観測可能性を議論した。これにより、SKAなどの電波でのサーベイ観測やスバルなどによる可視光でのサーベイ観測により、テクスチャーが構成されたエネルギー領域によっては、テクスチャーのシグナルが観測され得ることが判明した。 これらは初期宇宙での相転移が現在の宇宙に与え得る影響を定量的に見積もった研究であり、将来的な観測による宇宙史の解明には必要不可欠な準備であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は宇宙ひもやテクスチャーといった、初期宇宙の相転移の名残である宇宙論的位相欠陥のシグナルが、重力波や重力レンズ効果といった観測量を通して観測可能であることを示すことができた。 宇宙ひもについては、重力波の観測可能性に関する論文が出版済みで、さらに現在はY-junctionという三又構造がある宇宙ひもについても重力波を計算を行っており、これは29年度中には論文として投稿する予定である。 また、テクスチャーについても宇宙マイクロ波背景放射に対する銀河の重力レンズ効果や、銀河に対する重力レンズ効果を見積りを終えており、論文をsubmit済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
PLANCK衛星による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)のゆらぎの観測結果や、銀河の空間的な相関に見られるバリオン音響振動(BAO)といった、近年精密観測が期待されている効果を駆使して初期宇宙に起きていた事象を突き止める。 具体的にはCMBの揺らぎやBAOに現れる、一般的な宇宙論モデルでは説明できない特性に対して、尤度比検定やMarkov Chain Monte-Carlo (MCMC)法といった統計的方法を用いてこれらの特性に適するモデルを検証していく。
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Research Products
(5 results)