2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J05051
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 一輝 新潟大学, 自然科学系, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / 次世代シーケンス解析 / 根圏微生物 / 根圏土壌 / 乾燥地 / 砂漠化 / 群集構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、根圏微生物を生かした持続的な乾燥地農業の発展を目指し、トルコ中央部の砂漠化の影響を受けた自然植生を対象に、1)土壌の乾燥ストレスが土着アーバスキュラー菌根菌(AM菌)群集と細菌叢へ与える影響を網羅的に解析し、2)乾燥地農業・土壌劣化対策に応用可能な有用AM菌種を選抜し、胞子を確保して資源化すること、の2点を目的とする。 平成27年6月にトルコアンカラ東部のHasanoglanおよびKalecikの土壌劣化の程度の異なる6地点において夏季植生の試料採取および植生と土壌劣化の程度の把握を行った。試料植物は多年草のAstragalus、Verbascum、Artemisia及び一年草のFestuca、Aegilops、Stipa、Bromusの計7種とした。また、AstragalusやVerbascum等の多年草植物に関してもAM菌の根への感染及び共生器官の形成があることを、染色法を用いて現地で確認した。 採取した植物細根及び根圏土壌から全DNAを抽出し、土壌抽出DNAからは細菌DNAを、植物細根抽出DNAからはAM菌DNAをPCRにて増幅させた。土壌抽出DNAを鋳型に、細菌の16S rRNA遺伝子を対象とした定量PCRを行った結果、Atragalus属の植物根圏では細菌の存在量(DNAのコピー数)が他に比べてやや低い傾向が示されたが、その他の植物間や地点間では現在のところ大きな差は見られていない。 今後、平成28年4月中旬にトルコにて春季植生の試料採取を行い、既に採取した夏季植生と土壌微生物菌叢の季節変動の有無について、次世代シーケンサーを用いたアンプリコンシーケンス解析による検討を行い、微生物同士の相互関係や有用種の推定を行う。平成28年度中に、現地でAM菌胞子の単離および資源化を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
砂漠化の影響下にある土壌における根圏細菌及び共生糸状菌(AM菌)の群集構造を解析するに当たり、土壌劣化の程度の異なる複数地点を決定し、その土壌理化学性や植生の分析から研究に適切であると判断できた。 AM菌群集を本学所有のIllumina社製次世代シーケンサーMiseqを用いて解析するに当たり、PCR増幅の際の適切なプライマーペアの探索、あるいは作成が必要となったが、既存のプライマーペアの組み合わせで十分な菌叢解析が行える可能性が示唆され、現在検討中であるが、研究期間内に解析法の確立が十分に期待できる。 当初の予定では平成27年度中に2度の試料採取を行う予定であったが、27年夏におけるトルコアンカラの治安悪化を受けて、2度目の採取は一時延期となった。しかし、28年4月に春季植生として試料採取が完了しており、微生物群集の季節変動について十分な検討が行えることとなった。 今後、夏季までに次世代シーケンス解析を完了させ、トルコの情勢を注視しつつ、AM菌胞子の資源化を行うことで、研究計画の完遂が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Illumina社製次世代シーケンサーMiseqを用いてAM菌群集のアンプリコンシーケンス解析を行う方法について検討を進める。最も検出効率が良かった方法を用いて春季・夏季植生におけるAM菌叢及び根圏細菌叢について網羅的解析を行う。ネットワーク解析等を用いてAM菌と根圏細菌叢や土壌劣化との関係について考察を行い、有用種の推定等を行う。 トルコにおいて、現地AM菌の培養は継続しているが、今後それらについて菌種ごとに分離培養を行い、生物資源として保存する。近年トルコの情勢が不安定である為、渡航の時期については慎重に検討する必要がある。仮にトルコの治安がさらに悪化するようであれば渡航を取りやめざるを得ないが、現地研究協力者にAM菌の分離培養法については指導済みである為、その際には現地の協力を得ることで対応策とする。
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Research Products
(5 results)